医師会VS財務省「診療所の良好な経営」巡る対立 私たちの日々の暮らしにどう影響を及ぼすか
診療報酬は最終的にはどのような決着を見せるのか。
現在、建議を踏まえて財務省と厚労省が議論を重ねている。それをもって、12月中旬に厚労省から診療報酬改定の数字が示される。ちなみに前回は0.43%、前々回は0.55%のプラス改定だった。
診療所のマイナス改定は本当に実現するのかというと、土居教授は「そう単純ではない」と話す。
「まず、診療報酬には出来高払い制があるので、極端な話をすると単価が下がっても受診回数を増やせば収入は減らない。報酬単価の引き下げが経常利益率の低下につながるかは不明なのです。何より財務省も診療所を潰したいわけではないので、最終的に改定がどう行われるかは現段階ではわかりません」
「これって財務省と日医の対立の話で、我々には関係ないのでは?」と思う人もいるかもしれないが、必ずしもそうとはいえない。なぜなら、我々が支払う健康保険料の行方にもかかわることだからだ。
保険料の金額と割合を見る必要
保険料の負担を考えるときに、見なければならないのは2つ。金額と割合だ。
賃上げによって所得が増えれば、負担の割合が変わらなくても支払う保険料は増える。逆に、所得はさほど変わらないのに保険料が上がるということは、すなわちそれだけ負担割合も増えるということだ。
「プラス改定になるということは、単純に考えて、国民が負担する保険料が増えるということ。ただそれが、賃上げ率に追いついているのかいないのかが、一番重要になる」と土居教授は言う。
ちなみに現役世代の保険料の負担は年々増えているのが、以下の資料を見てもわかる。
財政制度等審議会財政制度分科会の資料では、協会けんぽの場合、2000年の医療保険料率は8.50%だったが、2012年からは10.00%となっている。2040年の推計値は11.80%だ。
別の資料となるが、健保組合の場合も2000年は8.50%だったのが、2012年には一度8.34%に減ったものの、2022年には9.26%に上がっている。
ここに介護や年金の保険料が加わると負担は一気に膨れ上がる。
では、収入と保険料を比較してどうかというと、2012年~2021年度の保険料の負担の伸びは年2.6%に対し、賃金の伸びは年0.9%にとどまり、保険給付の伸びのほうが、我々の収入の伸びを上回っている。
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