医師会VS財務省「診療所の良好な経営」巡る対立 私たちの日々の暮らしにどう影響を及ぼすか

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これには日医も黙ってはいられない。

松本会長は記者会見で、「コロナ対応で利益が上がったから報酬削減というのは、災害対応で残業や手当が増えたから、その分賃下げするのとまったく同じ主張」「診療所も中小零細企業であり、物価高騰や賃上げ上昇を価格に転嫁できず苦しんでいる」と強い口調で反論した。

ここで少し社会保障と診療報酬についてみていきたい。

私たちが支払っている(給料から天引きされている)社会保険料は、大きく健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の3つに分けられ、それぞれ医療や介護、年金の財源となっている。

医療費はこの健康保険料と税金、そして治療を受けたときに支払う自己負担率(1~3割)から成り立っており、具体的には、保険料負担が約24兆円(49.5%)、税金負担が約18兆円(36.8%)、患者の自己負担が約7兆円(13.6%)という比率だ。

医療費はまた、診療報酬という医療行為ごとに決められた点数(1点10円)によって支払われている。例えば、初診料は288点、再診料は78点といった具合で、そこに条件によって加算が付く。医療機関はこの診療報酬によって収入を得ているわけだ。

診療報酬は2年に1回改定され、今議論されているのは、「来年4月からの診療報酬がどれくらいになるか」という部分となる。どれくらいのプラスになるか(マイナスになるか)は、病院運営に携わる人たち(開業医など)にとって非常に大きな関心事なのだ。

マイナス改定で国民の負担を抑えたい

財政審の建議では、診療報酬がプラスマイナスゼロ改定でも、高齢化による医療の需要が増えることなどで、医療費は8800億円(うち健康保険料分は4400億円)が自然増となるとしている(以下の図)。※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

財政学を専門とする慶應義塾大学経済学部の土居丈朗教授は、「自然増の分だけ国民の負担が増える。その増額分を診療報酬のマイナス改定で抑えたいというのが、財政審の考え」と述べる。

診療報酬改定
(出所)「令和6年度 予算の編成等に関する建議」資料Ⅱ-1-16より(注)各財源別の医療費の「自然増」については、概算要求における医療費(国費)の「自然増」を基に、「国民医療費の概況」(2020)の財源比率を用いて機械的に算出したもの。

診療報酬の項目は膨大で、それぞれの項目についてプラス改定されたり、マイナス改定されたりする。最終的にはトータルでプラス改定なのか、マイナス改定なのかという話になるが、今回、そのマイナス改定の項目に挙がったのが、診療所の「極めて良好な経営状態」(建議)だった。

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