「あさイチ」性暴力被害特集に危うさを感じたワケ 旧ジャニーズ騒動に影響されすぎていないか

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ただそれでも、この日の男性に対する性暴力特集には、1つ大切な視点が欠けているところがあり、「誤解から別の被害を生むかもしれない」という危うさを感じてしまうものがありました。また、それは「あさイチ」だけの問題ではなく、他のメディアやSNS投稿する私たちにも該当する危うさでもあるのです。

被害者は誰で、加害者は誰なのか

特集は「妻のすすめで被害を打ち明けることにした50代男性」「のちに『あれは性被害だった』と気づいた30代男性」「被害を周囲に理解してもらえなかった20代男性」「小学生の息子が被害に遭った50代の母親」「適切な支援を得られず悩みを抱え続けた40代男性」「長い年月が過ぎた今年、友人に打ち明けられた60代男性」という6人のエピソードを軸に構成。さらに、視聴者から寄せられた50代男性の性被害エピソードが読み上げられました。

番組はこれらのエピソードを聞いた出演者たちがトークしていく形で進み、その合間には、「性暴力被害経験がある男性は推計2~3割」(立命館大学 宮﨑浩一氏の論文 2021)、「被害のことを『誰にも話していない』 男性42.3% Xジェンダー29.7% 女性31.4%」(NHK“性暴力”実態調査 ウェブアンケート 2022年3月11日~4月30日 性暴力被害に遭ったという人・その家族など3万8383件の回答)などのデータも紹介。

また、「同意のない性的な行為」という内閣府男女共同参画局による性暴力の定義を示したうえで、「同意のない体への接触」「性的な冗談やからかい」「同意のない性行為(キスやセックスなど)」「性的な画像や写真を見せる/送りつける」「のぞき・盗撮」という5つの該当行為があげられました。その他にも、性被害に遭った際のアドバイスや支援センターの紹介などがあり、過不足なくバランスのいい構成に見えましたが、どうしても1つだけ気になるところがあったのです。

そのどうしても気になったのは、軸に据えたエピソードの7つ中6つが“男性→男性”への性被害だったこと。「適切な支援を得られず悩みを抱え続けてきた40代男性」のエピソードが唯一“女性→男性”への性被害でしたが、他の6つはすべて“男性→男性”への性被害に偏っていたのです。

番組で紹介された性被害の図式をもう少し具体的に書くと、「<加害>40代くらいの男性→<被害>中学1年生」「<加害>文具店主の高齢男性→<被害>小学3年生」「<加害>同じゼミの男性大学生→<被害>同級生の大学生」「<加害>若い男性教師→<被害>小学生」「<加害>顔見知りの女性→<被害>小学生」「<加害>文具店の男性→<被害>小学生」「<加害>友人の父親→<被害>小学生」とさまざまなシチュエーションでの性被害をあげながら、そのほとんどが“男性→男性”に偏っていました。

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