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「あさイチ」性暴力被害特集に危うさを感じたワケ 旧ジャニーズ騒動に影響されすぎていないか

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  • 木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者
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このような偏ったバランスでは、世間に「同性愛の人は危険」という誤解を招きかねません。同性愛の当事者にとっては「差別」と怒りを感じる人もいるでしょう。実際、私のコンサル経験では「会社の上司、部活の先輩、学校教師や家庭教師、友人の母や姉、同じクラスの女性グループなどの女性から性被害やセクハラを受けた」という男性からの相談もありましたし、彼らのつらさは“男性→男性”と同様のものがあります。

この日の約65分間にわたる特集の中には、“男性の性被害についての誤解”として3つの項目をあげるシーンがありました。同性愛者に対するフォローは、その最後の項目で「加害を行う男性は同性愛者である(という誤解)」をあげて、「差別にならないよう配慮が必要」「性的な欲求より支配欲で性加害に至るケースも多い」とコメントした程度だったのです。

多様性を尊重するNHKだからこそ

今回の特集が旧ジャニーズ事務所による“男性→男性”をベースに制作したからなのか。あるいは、スタッフの中で「男性の性被害と言えば“男性→男性”というイメージがあった」からなのか。それとも、「たまたま取材の結果がこうなっただけで他意はない」のか。いずれにしても日頃NHKは、どのメディアよりも多様性を尊重したさまざまな番組を手がけているだけに、同性愛者への差別につながりかねない今回の偏った構成に首をひねってしまったのです。

男性に対する性加害は、「男性の場合も、女性のケースもある」し、「男性でも、異性愛の人と同性愛の人のケースがある」ということ。男性に対する性加害は、まだまだ世間の理解が進んでいない段階だけに、メディアが偏ったバランスで伝えていては、世間の誤解や分断を生んでいくだけでしょう。また、“男性→男性”ばかりに偏っていると、「“女性→男性”の被害者がますます打ち明けにくくなる」という危うさも感じられます。

「メディアが扱い慣れていない」からこういうことが起こり得るのであって、もちろん「あさイチ」が責められるべきところはありません。特集を組んだことも、スタッフと出演者の向き合う姿勢も素晴らしいものがありましたし、今後回数を重ねるほどよいものになっていくのでしょう。

ここであげたことは性に限らず、さまざまな暴力や支配に対しても同様であり、報じるメディアも、ネット上で論じる人々も、大局的に見る冷静さと、被害者に寄り添う優しさを忘れずにいたいところです。

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