――お父様がイスラエル軍に拘束された時、イスラエル兵に無邪気に話しかけるマリアムさんを不思議に思ったその兵士が「憎むことを教えていないのか」と聞くと、お父様がある言葉を返したそうですね。
妹が0歳、私が3歳の時に、ヨルダンとの国境で家族全員がイスラエル軍に機関銃を向けられて拘留された経験があります。父が目の前で目隠しされ、手錠をはめられ、刑務所へ連れ去られました。
妹と私は「話しかけたら父を殺す」と脅され、母が軍用車両の中で歌って慰めてくれたのです。それでも刑務所から戻ってきた時、父は兵士に「子どもに憎しみは教えない」と話しました。
長年にわたり数々の不正に苦しむパレスチナ人として、父が決して憎しみを持つな、と教えてくれたことは宝物です。憎しみと怒りは異なる物。怒りや悲しみは不正を正す肯定的な原動力にもなりうるのです。
今、日本に期待していること
――日本は今年、パレスチナ難民支援70年を迎えました。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は最近、アジア初の関連拠点を日本に設置したい意向を示していますが、両方にルーツを持つマリアムさんは日本に何を期待しますか。
日本の支援、友好関係には、心から感謝しています。特に日本の皆様にはパレスチナを身近に感じて頂きたいです。日本には、アジア諸国とともに、外交を通して占領の終結に向けて働く立場にあり、その責任があります。
――オペラ歌手として常に平和の大切さを訴えられています。
1人の芸術家ができることは実にささいですが、希望を失わず、まずは自らのコミュニティー内、そして声が届く限り真実を語り続け、貢献を続けることが大切です。具体的には、パレスチナ人作家の詩に基づいた歌曲を主に作曲しています。自らエッセイ、詩の執筆活動も続けています。
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