OEMは冷蔵庫や洗濯機では古くから行われてきた。PCでも、広達電脳などの台湾企業が製造を行う場合が多い。電気機器の船井電機、レンズのタムロンのように、日本企業がOEMを行う場合もある。半導体では、台湾積体電路製造、聯華電子などファウンドリーに生産委託する方式も広く行われている。
こうした方式も含めれば、日本製造業の実態的な海外生産は、上の数字以上に進んでいると考えることができる。
したがって、「雇用確保のため国内空洞化に反対」といったたぐいの議論は、すでに無意味なものになっているともいえるわけだ。
海外移転は円安で10年間中断していた
日本企業の海外移転は、1993年ごろから顕著に進展した。
「海外事業活動基本調査」(00年6月)によると、製造業の海外進出企業についての海外生産比率は、89年度から93年度までは16~18%程度で安定的であったが、その後上昇し、99年度には34・9%にまで達した。製造業全体を見ると、85年度には3%でしかなく、その後も92年度までは6%台にとどまっていた。
しかし、それ以降に傾向的に上昇して、99年度には14・1%になった(なお、この調査における海外生産比率は、国内法人売上高に対する現地法人売上高の比率であり、海外進出企業ベースの海外生産比率は、本社企業売上高に対する現地法人売上高の比率である。したがって09年度データとは定義が異なる)。
それでもこの当時の日本の海外生産比率は、アメリカ、ドイツなどと比べると、かなり低かった。97年度における海外進出企業ベースの海外生産比率は日本が31・2%に対して、アメリカは48・6%だった。したがって、今後さらに上昇する可能性があると考えられたのである。こうしたことを背景として、00年ごろには、「空洞化」の議論が起こった。