(第2回)円安で中断していた海外移転が再開した

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 他方で、国内製造業の売上高経常利益率は、04年度から07年度の間は、海外現地法人と同じか、あるいはそれより高かった(この現象は製造業で顕著に起きたことに注意が必要だ。非製造業では、04年度から07年度の間に国内での利益率が高くなるということはなかった)。

しかし経済危機によって、国内法人の利益率が急減し、08年度に2・3%、09年度に2・4%となった。したがって、国内生産と海外生産の相対的な関係性が逆転し、海外生産が圧倒的に有利になったのである。需要の減少は世界的だったことを考えれば、国内と海外でこのような利益率の差が生じた大きな原因は円高にあったと考えることができる。

なお、10年度の四半期別での売上高経常利益率は、次のように推移している(「法人企業統計」、11年6月2日速報値)。順に、4・4%、3・7%、4・3%、3・9%である。

つまり、08、09年度よりは回復したものの依然5%未満であり、経済危機以前の水準には回復していない。したがって、海外生産のほうが利益率が高い状態は続いている。昨年夏ごろから海外移転が顕著になったのはこのためだ。

ところで、東日本大震災は、国内生産の相対的優位性をさらに低下させた。法人企業速報値の10年度第4四半期(11年1~3月)の数字には、これが一部表れている。特に鉄鋼業(売上高経常利益率が1・8%に低下)と輸送機器(同1・9%に低下)には、顕著に表れている。

今後を展望すると、電力コストの上昇によって、国内の利益率はさらに下がるだろう。そして、それは電力多消費産業である製造業において顕著に生じることだ。だから、移転を阻止するのは不可能だ。それを所与として、国内での雇用創出を目指すしかない。それをいかなる方策で行うかが重要な課題だ。


野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)


(週刊東洋経済2011年6月18日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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