(第2回)円安で中断していた海外移転が再開した


 しかしその後、海外生産比率は上昇せず、この10年間は目立った変化はなかった。それは円安が進んだからだ。輸出の増加によって国内生産が増えた。そのため国内の投資が回復し、海外投資は伸び悩んだ。つまり、工場の国内回帰現象が生じたのである。

しかし、これは持続するものではなかった。輸出が増加したのは、円安によって日本製品の価格競争力が見掛け上、高まったことによるものだからだ。したがって経済危機によって円高バブルが崩壊すると、日本製品の競争力が低下したのだ。経済危機後、世界経済が回復したにもかかわらず、日本の輸出がそれに見合って増加できなかったのはこのためである。

昨年夏ごろから生じている海外移転は、こうした経済情勢の変化に対応するものだ。つまり、この10年間の円安バブルによって一時的に中断されていた動きが再開しただけのことである。

経済危機後に国内生産の利益率が急低下

国内生産と海外生産の相対的な優位性は、利益率に表れている。経済危機前には国内生産のほうが有利な時期があったが、経済危機でそれが逆転したのである。具体的には、次のとおりだ(グラフ参照)。

04年度以降、製造業の海外現地法人の売上高経常利益率は、ほぼ5%程度の水準であった。08年度には経済危機の影響で3・0%に低下したが、09年度は4・8%に回復した。

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脱炭素の移行期に化石燃料の争奪戦が勃発。天然ガスの価格は歴史的な急騰を記録しました。余波はサプライチェーンの混乱から世界経済の後退懸念、原発待望論まで広がります。資源小国の日本が生き残る道はあるのでしょうか。

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