横のエレベーターほかトヨタ自動車九州の独創性 なぜ「製造以外」でもアイデアが光るのか?

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具体的な事例は3件ある。1つは、福岡トヨタと連携した、九州大学伊都キャンパスでの学生向けカーシェアサービスだ。

2つ目は、大分市佐賀関でのグリーンスローモビリティ実証。地元住民の買い物や通院、また路線バスとフェリー乗り場をつなぐ観光利用などで活用されている。

3つ目は、沖縄の「やんばるZEVプロジェクト」だ。

やんばる国立公園内での観光と、生物多様性の保護のためにトヨタAPMを活用している。主な利用は夜間に行うナイトツアーだが、収益性を考慮して日中はオクマ プライベートビーチ&リゾートでの活用も視野に入れている。

車両情報見える化アプリの画面例(写真:トヨタ自動車九州)
車両情報見える化アプリの画面例(写真:トヨタ自動車九州)

水素ファクトリーシステム

水素ファクトリーシステムは、2022・2023年度、福岡県水素グリーン成長戦略会議の補助事業として行われている「再エネと連動運転可能な定置型燃料電池発電システムの開発」のこと。

実際の水素ファクトリーシステム(写真:トヨタ自動車九州)
実際の水素ファクトリーシステム(写真:トヨタ自動車九州)

トヨタ自動車九州のほか、ヤンマー発電システム製造、福岡市のベンチャー企業であるアークエルテクノロジーズ、また電源系統や通信系統の設計を行う北九州市のAIDなど、地元九州の企業とのコラボレーションとしている。設置場所は、トヨタ自動車九州の小倉工場内だ。

そのほか、オートポリス(大分県)で2023年7月に開催されたスーパー耐久シリーズで、トヨタの液体水素カローラに液体水素を充填する岩谷産業製の装置に電力供給を行った。

なお、トヨタ本社でも水素事業に取り組んでいるが、トヨタ本社が2023年半ばに立ち上げた「水素ファクトリー」と直接的な関係性はない。

「人がやるべきことは、人がやる」風土

以上のように、トヨタ自動車九州では、限られた人数かつ低予算で「やれることを、着実に積み上げていく」という基本姿勢のもと、社会課題を「私事」として捉えてプロジェクトの実効性を高めていることがよくわかる。

取材に協力していただいた、トヨタ自動車九州 次世代事業室 主幹の植野直亮氏(左)と、同主幹の山口大介氏(右)(筆者撮影)
取材に協力していただいた、トヨタ自動車九州 次世代事業室 主幹の植野直亮氏(左)と、同主幹の山口大介氏(右)(筆者撮影)

トヨタ本社とは常に情報交換しており、トヨタ本社が進めるプロジェクトとは重複しないようにしながら、「トヨタ自動車九州らしいのか」、または「トヨタらしいのか」について常に整合性を確認しながらことを進めているという。

「人がやるべきことは、人がやる」

筆者は2023年中、トヨタの東富士研究所や愛知県内のトヨタ生産拠点各所で、トヨタの最新技術を目の当たりにしてきた。

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そして今回、トヨタ自動車九州・次世代事業室の皆さんと意見交換する中で、改めて「トヨタらしい」物事の進め方だと実感した。

そんな、トヨタ生産方式をベースとするような発想の「トヨタ自動車九州らしい」プロジェクトが今後もいろいろ出てくることだろう。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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