実は、横のエレベーターという発想には、トヨタ自動車九州の過去の経験が生かされている。コロナ禍において、地元地域向けのワクチン接種対応車両を15台用意し、89の自治会、計500カ所のバス停で対応したのだ。
その際、地元ドライバーは「地元の道はカーナビなしで十分」という話があり、あえてAIオンデマンド化を導入しなかったことで、コストを抑え、さらに早期の実用化につながったという経緯がある。
こうした横のエレベーターは今、トヨタ自動車九州の敷地を離れ、大分市の富士見が丘団地でも活用される。
富士見が丘団地は、敷地面積110ha、人口6600人、高齢化率38%のいわゆるオールドニュータウンで、このエリアでの移動の足として、2023年11月20日から実証を始めたのだ。
車両はトヨタが研究開発中の低速走行モビリティ「APM」で、バックアップ車両を含めて4台をトヨタから借りて運用する。
停留所は、広い世代が認識できるように「あ」「い」「う」「え」「お」といった一文字表示として、各停留所に専用タブレットを置く。運行管理のため、さまざまなデータを収集して解析する仕組みだ。
シェアリングサービス
宮田工場の敷地内では、電動キックボードのシェアリングサービスが実施されている。2020年3月から2023年6月まで行ったが、今後もシステムを改訂してサービスは継続する。
これまでの利用実績は累計5万回、総走行距離4万5000km。ヘルメットや帽子の着用義務はない。
太陽光パネルと「プリウス」の中古バッテリーを組み合わせたパッケージを独自に開発した充電ステーションを設置し、電動キックボードは非接触で充電する仕組みにもトライしている。
また、ワンウェイ利用などによるステーションでの電動キックボードの偏在に対しては、トヨタ自動車九州としてデータに基づいて再配置を実施するなど、運用のほとんどを内製化したのが特徴である。
トヨタ車以外の既存車向けデータ収集デバイス
GPSを位置情報だけではなく、急発進や急加速などドライバーの運転評価、さらに燃料残量やBEVのバッテリー残量などの可視化に活用する専用デバイスを開発している。
近年のトヨタ車の場合、新車製造時点でクルマと外部とのデータを送受信するためのDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)が装着されているが、トヨタ車以外の既存車にも対応できるのが特徴だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら