トヨタ最高益を礼賛できない「EV周回遅れ」の深刻 利益率でテスラ超えは「残存者利益」にすぎない

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今年開催のジャパンモビリティショーでトヨタ自動車が披露した、SUVタイプのバッテリEVコンセプトモデル「FT-3e」(撮影:梅谷秀司)

トヨタ自動車は11月1日、2024年3月期の純利益が過去最高の3.95兆円になる見込みと発表しました。従来予想の2.58兆円から上方修正した理由のうち約1兆円は円安効果ですが、その要因を除いても好調であることに変わりはありません。

この決算発表を受けて、トヨタが底力を見せたと礼賛するアナリストの声が目立ちました。中でも目を引いたのが、トヨタの稼ぐ力がテスラを超えたという報道です。トヨタは2021年上期に売上高純利益率でテスラに抜かれて以降は後塵を拝してきたのですが、今回の決算で久しぶりにライバルを稼ぐ力で超えることができたというのです。

また、自動車各社の業績については中国市場の減速が不安要因になっていますが、その点でも今回の決算でトヨタが中国への依存度が低いことが強みと評価された様子です。この先、中国市場がさらに停滞してもトヨタの決算への影響が少ないことがプラス要因とも報道されたのです。

メディア礼讃の“既視感”

数字自体は確かに凄いです。トヨタの年間の乗用車販売台数は1000万台超ですから、ざっくり言えば車を1台売るごとに40万円近くの利益を生む構造を作り上げたことになるのです。

ただメディアが礼賛する様子を見ると、どうしても私は気持ちが暗くなります。過去、このような事象を何度も見てきたからです。1990年代後半のフィルム業界や家電業界がまさにこんな空気でした。

当時、アナリストだった私は「この先、業界構造が激変する」と警鐘を発する立場にいたのですが、決算数字はその真逆で業界を挙げて好調さを維持していました。先にメディアが持ち上げて、業界リーダー企業の幹部たちも段々とまんざらでもない気分になってくる。そうした変革期は私のようなコンサルタントが一番気苦労をすることになります。

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