トヨタ最高益を礼賛できない「EV周回遅れ」の深刻 利益率でテスラ超えは「残存者利益」にすぎない

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2つ目の問題は、実はトヨタが本気を出しているのに負けているという事実です。「EVではトヨタがまだ本気を出していない」のではなく「世界の情勢がSDVにシフトしたため、トヨタは本気を出しているのに勝てない」ということです。

「それならなぜ、トヨタがここまで好決算をはじき出せるのか?」。読者の皆さんは思われるかもしれません。経営に詳しい方ならすぐに「残存者利益」という言葉が頭に浮かぶはずです。縮小していくマーケットで、主にそこだけに力を入れてシェアを高めれば稼ぐ力は自然と上がります。

今回の決算発表でトヨタは、2024年3月期でのEVの販売見通しを20万台から12万台へと4割も下方修正しました。

自動車の世界では年間4730万台が売れるガソリン車市場の方が、年間1020万台のEV市場よりも稼ぎやすいマーケットです。トヨタはほぼ100%近くをガソリン車市場で稼ぎ、テスラは逆に100%EV市場で稼ぎます。

ちゃんとやればトヨタがテスラよりも稼ぐ力が上になるのは当然なのですが、そのちゃんとが「儲からないEVにこれ以上力を入れなければ」になってしまって、その結果が最高益というのでは構造が違って見えてきます。

モビリティのイノベーションが停滞

経営コンサルタントの目でみると「最高益トヨタ」の抱える問題は、ここでも2つあります。

1つ目は、日本全体でモビリティのイノベーションに対してのサボタージュがまん延していることです。

世界ではかなり進んでいます。ライドシェアは日本以外どの国でも見られるし、無人タクシーは問題を抱えながらもアメリカと中国で営業運転を開始しています。EVの充電インフラは日本は数だけ多くて故障したステーションが放置されていますが、欧州、中国、アメリカともに使えるステーションが拡充されています。EVの普及を支えるグリーン電力の発電量も順調に増加しています。

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