「靴磨きの師匠」とマーケティングの神髄《それゆけ!カナモリさん》

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 「オリジナルクリームを使っている意味はそこにもあるんだよ」と師匠はいう。顧客が簡便に手入れできるようなクリームは市場に存在していなかった。それを実現する意味もあって、オリジナルを作ったのだという。

「お客さんもきちんと手入れをしてくれてこそ、靴はいい状態を保てる。そのためのクリームでもあるんだ」と。

いい状態を顧客とサービスの提供者が共に創る。コトラーの「マーケティング3.0」のSocial的な意味合いは含まれていないが、「共創」というキーワードに通じる部分だ。

単なるモノやサービスを提供(供給)するだけの状態をコトラーは「マーケティング1.0」といった。目の前の客の靴を磨くだけの状態と同じだ。本当の靴磨き職人は、「顧客がどのような存在なのかを正しく認識すること」から始め、顧客志向を貫いている。そして、顧客と共に、「靴を輝かせる」というサービスを共に創り出しているのである。

あなたのビジネスは、顧客を「空が映る」までに磨き込み、輝きを放ち続けられるように、共に努力する“しくみ”が作れているだろうか?

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2011年6月10日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。

 

金森 努 青山学院大学経済学部非常勤講師

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かなもり つとむ / Tsutomu Kanamori

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
 

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