「売れ続けるしくみ作り」は職人との共通点
「一生懸命やるだけじゃダメなんだよ。要は“しくみ”を作れるかが成功のカギなんだ」
靴磨き職人の師匠は何度も通ううちに、子どもが宝物をそっと見せてくれる時のようないたずらっぽい目をしながらヒミツを話してくれた。
いや、正確にはもうヒミツではない。「今は弟子たちも自分と同じ技術が使えるようになっているから楽になったんだ。だからこんなヒミツも話してあげられる」のだという。
客の靴を見て初めてかどうかを見極める。初めてなら、師匠が自ら磨く。2度目以降なら、弟子にやらせる。なじみの客でも靴を見て定期的に師匠が磨くようにする。そしてしばらくは弟子にやらせる。それが、“しくみ”の表面的な姿だ。
師匠がやっているのは「厚塗り」。クリームをたっぷり使って靴に刷り込む。「厚塗り」といっても、表面に付着しているのではない。前述の「炭素がダイヤモンドになるような圧力」で、革の中まで刷り込んでいく。しっかり刷り込まれたクリームは、徐々に表面に染み出していく。弟子たちがやることは、それを「削りながら、再度刷り込むこと」だという。すり込んだクリームが少なくなっているようだったら、師匠が「厚塗り」する。それが、“しくみ”のキモだ。
師匠は弟子と分業をするという「売れ続けるしくみ」を作っていたのだ。
「マーケティングとは?」を端的に表現すれば、「売れ続けるしくみ作り」である。単発で「売る」や、偶然「売れた」ではなく、誰がやっても、何度でも「売れ続ける状態」を作る。その「しくみ」を作ることこそがマーケティングなのだ。師匠は靴磨きのマーケティングを行っていたのである。
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