膵臓がんを知った50代独身女性が「やり始めた事」 独身・既婚に等しくある「おひとりさまリスク」

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病院の最後の支払いだって気がかりです。誰かにしてもらわねばなりません。使っていない銀行口座も、いくつかあります。解約して集約しておかなきゃ……。

人生で二度とない衝撃的な余命宣告をされたのに、「迷惑をかけたくない」と、とても冷静な自分がいました。そしてそのときにふと思ったのです。私にはまだこうして、考えたり行動したりする時間もあるし、考えることのできる頭もある。でも、もし突然に意識不明の状態になるような病気や事故にあったら、部屋も何もかもこのままの状態で、誰かに何とかしてもらわなければならない。

さまざまな片付けも、自分が死んでからのことも、誰にも何もお願いすることなく、突然、死に向かうこともある……。そう考えると、自分のおかれた状態はまだマシなのだと、気が軽くなりました。

死ぬことなんてまだ先だと思っていたし、結婚せずにきたことも「たまたまそうなった」だけのこと。このような事態はいつか必ず来るのに、その「いつか」をまったくイメージしていませんでした。

せめて弟家族にだけは迷惑をかけたくない。そう思った祥子さんは身元保証会社にすべてを委ねました。

財産管理や任意後見契約、死後事務委任契約も全て締結しました。弟家族に気を遣ってあれこれお願いするくらいなら、お金を払ってサポートしてもらおう。

親族には気を遣いたくないし、相手にも気を遣って欲しくない。気兼ねなく、愛情だけでつながっていたい。お金は遺すことより、今の自分をケアしてくれるものに使おう。人生最大に追い込まれながら冷静に考えている自分に驚くとともに、考えて決断できる自分が愛おしくなりました。

身元保証会社と契約できるのは、意思がはっきりしている人だけ。

「私はまだ幸運でした」

そう漏らした祥子さんは、その後、半年を少し過ぎた頃にひっそりと人生の幕を下ろしました。

妻が認知症になって

5人に1人が認知症になってしまうといわれているのが、日本の長寿社会です。それなのに日本人の大半は、自身が認知症になったときの備えをしていません。

「自分に限って大丈夫……」と思っているのでしょうか?

私のもとに、ご相談に来られた山中さん(仮名・73歳)。認知症で施設に入所してしまった奥さんの銀行口座から、お金を引き出したいと悩んでいました。

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