佐藤正久氏「ガザ地区民間人避難へ自衛隊参加を」 各国による「海上回廊」の設置を検討すべき

拡大
縮小

松山キャスター:ハマスというのは一種の思想であり、運動だとすれば、イスラエルがハマスを完全に排除することは不可能ということか。

シアム大使:その通りだ。ハマスはイスラムの運動なのだから。

松山キャスター:イスラエルとハマスが戦闘の一時休止と人質の解放で合意した。インタビューで、ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使もワリード・シアム駐日パレスチナ大使もともにこの合意がそのまま続いて本格的な停戦になることはないだろうとの見方を示した。イスラエルのコーヘン大使は「たとえ全ての人質が解放されても、その後、ハマスの殲滅までは戦闘行為を続ける」と主張した。パレスチナのシアム大使は「ハマスは思想だ。ハマスの幹部を排除したとしても、思想は残り続ける。殲滅は不可能だ」と言う。2人の見解を聞くと、完全な解決は難しいという印象を受けた。

佐藤氏(写真:FNNプライムオンライン)

イスラエルの考え

佐藤正久氏(自民党参院議員、元外務副大臣):イスラエル大使の話を聞いて、イスラエルらしいなと思った。私も国連のPKO(平和維持活動)の隊長としてイスラエルにいた。イスラエルの考えは「自分たちで何とかしなければ、国や国民は守れない」というものだ。今回の一時戦闘休止が続くのか、終わるのかは、どちらかと言うと、圧倒的に軍事力があるイスラエルに決定権がある。コーヘン大使が言うように、では国際社会は何かやってくれるのか、国連は何をやってくれるのか、ハマスの軍事力を抑えてくれるのかというと、何もやってくれないだろうと。だったら俺たちがやるしかないと。当然ハマスについても、脅威というのは意思と能力と両方からなる。意思をくじくのは無理でも、能力を叩くというのが今回の目的だ。これまでも「芝刈り作戦」と言われるように、逐次芝が伸びたら狩るというのが対ハマスの能力を取る、刈るのが今までのやり方だ。今回はさらにそれを本格的、二度とこのような形にはさせないというのがイスラエル側の立場だ。今回、人道的な観点から一時休戦になったのは極めて大きなことだ。イスラエル側が譲った部分はあり、なんとかこれをきっかけに事態が動けばいいと思うが、実際はなかなか簡単ではない。

玄葉光一郎氏(立憲民主党衆院議員、元外相):ぜひこの合意が確実に履行されるようにしたいし、そうでなければいけない。この一時戦闘休止を停戦に向けた重要な一歩にしなければいけない。簡単ではないと思うが、こういうことを繰り返して最終的に停戦に持っていくということかなと思う。両大使にはそれぞれ言い分がある。ロシアのウクライナ侵略は白黒はっきりしていて、ロシアが悪い。だが、イスラエルとパレスチナの問題は2000年来のもので、なかなかどちらが白か黒か、良いのか悪いのかははっきりしない。だからこそ早く(戦闘を)止めることがあくまで大事だ。長引けば長引くほど反イスラエル感情が反米感情につながり、結果として中国やロシアを利することになりかねない。一刻も早く(戦闘を)止めることが非常に大事だ。

松山キャスター:イスラエル、パレスチナ両大使ともにインタビューの中で、日本が人道支援を行う方針を示していることなど、日本の対応を高く評価していた。

玄葉氏:日本はあくまで人間の尊厳と法の支配という、私が考える日本外交の座標軸を繰り返し繰り返しシンプルに、同じことを、すべての場所で、すべての人に言い続けることが大事だ。イスラエルにもハマスにも、同じことを、ダブルスタンダードではなく、欧米はダブルスタンダードになりがちだから、(日本は)同じことを言い続ける。ハマスも悪いけど、イスラエルもやり過ぎだということも含めてしっかり言う、同じことを言い続ける。このことが極めて大事だ。

佐藤氏:バランス外交というのは、いろいろな関係国の顔色を伺いながらやるのがバランス外交ではない。バランスを取るための軸、視点をどこに置くか、これによってバランスを自ら作り出すのがバランス外交だ。今回は、ハマスでもイスラエルでもない。まさに人道支援という部分に視点を置いて、そういう観点からやるということが実際大事だ。そのために場合によって海上自衛隊を含めた「海上回廊」というものを作り、いろいろな観点で日本ができることをやる。やはり汗をかかなければ、湾岸戦争の二の舞になる。そこはしっかりやるべきだ。

玄葉氏:今回のことで何度も繰り返し言うが、大事なことは「内戦の類で終わらせること」だ。つまり、イランが本格介入するような大きな紛争にしたら、もう世界中が大混乱になる。結果として、中国、ロシアを利することになるから、あくまで内戦の類で終わらせる。そのためには一刻も早く停戦に持ち込むことだ。ハマスの殲滅というのは相当難しい。仮に殲滅できたとしても、これまでのアフガニスタンやイラクの過去はどうだったか。イラクでは、IS(イスラム国)が出てきた。結局、さらに過激化した武装勢力が出てくる可能性が高い。ハマスの殲滅と言っても簡単でないし、できてもそうなるということだから、一刻も早く(戦闘を)止める。このことに尽きる。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT