ChatGPTでついに「英語」が習得できるようになる シンボル・グラウンディングを活用した勉強法

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これは、数学や自然科学の法則などの理解という問題の本質に関連しており、AI(人工知能)に関する基本問題として、以前から議論されてきたものだ。ChatGPTが登場して、様々な幻覚現象(ハルシネーション)の原因の1つとしてAIのシンボル・グラウンディングがあることから、再び大きな注目を集めるようになった。

本稿で考えているのは、AIのシンボル・グラウンディング問題ではなく、この概念を利用して、勉強を進めることだ。

以上で述べたのは、外国語の勉強における応用だが、文章の説得力を上げるためにも、この概念を応用できる。それは、説明をわかりやすくするために、例や比喩を用いることだ。つまり、抽象的な概念を、形のあるものに「グラウンディングさせる」のである。

イエス・キリストは、信仰の重要性を人々に理解させるために、しばしば比喩を用いた。例えば、信仰心が育つことを、麦の生育に喩えている説教がいくつもある。イエスの強い説得力は、このような比喩に支えられているところが大きい。

なお、いまの私の説明は、例示が強力かという例を示したものである 。「例を示すと説得力が高まる」と一般的にいうよりは、「キリストの説教」という具体例を示すことによって、私の主張の説得力は増強されたはずだ。

考えてみると、「シンボル・グラウンディング」という言葉自体がそうだ、「抽象的な概念を身近なものと関連付けて理解する」というような説明ではなく、「グラウンディング」と言えば、直ちにその意味がわかる。商品名でも、日常的な感覚にグラウンディングしているとよくわかる。

例や比喩を ChatGPTに教えてもらう

ただし問題は、適切な例や比喩がなかなか思い浮かばないことだ。

そこで ChatGPTの助けを借りる。「このようなことを表現したいのだが、この例として何か適切なものがないか?」「比喩として適切なものがないか?」などと聞くのである。

ChatGPTは、このような問いに対して、いくつもの候補をあげてくれる。その中には、要求に合うものがあるだろう。それを利用することによって、あなたの文章の説得力は増強される。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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