最後の1店が閉店「ベッカーズ」を追い込んだ"5難" 37年の歴史に幕、ハンバーガー業界囲む厳しさ

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③ 人手不足

人手不足の問題は、多くの業界に共通した問題だが、中でも外食業界は深刻だ。実際、帝国データバンクの調査でも、飲食店の人手不足の実態が浮き彫りになっている。同社が行った「人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)」によると非正社員では30.9%が人手不足を感じているが、業種別では「飲食店」が82.0%と唯一80%を超えた。

飲食店は、パート・アルバイトなどを含む非正社員が、就業者全体の70%以上を占めているという特徴があることも、人手不足感を強くしている。加えて、コロナ禍の休業に合わせて解雇したアルバイトやパートが戻ってこない背景も重なり、人がいないために営業ができない店舗も少なくない。

バーガー業界はロボット化が難しい?

JR東日本クロスステーションも、この問題を深刻に捉えている。事実、同社が首都圏の駅構内で運営する「いろり庵きらく」では、コネクテッドロボティクスの「そばロボット」を活用した店舗づくりを進めている。

このロボットを活用すると、生そばの投入から茹でる、洗う、締めるという一連の調理工程を完全に自動化でき、その間、人手がかからない。現在、導入店舗数を順調に増やしており、2026年までに30店舗で活用するとしている。

そばロボット
そばロボット(写真:筆者撮影)

そもそも同社はテクノロジーに対する感度の高い企業だ。2019年には、当時、タッチパネルでメニューを注文、決済できるキオスク端末を池袋東口にあったベッカーズに導入したり、スマホによるモバイルオーダーを複数の店舗で活用したりして、人手が足りなくても成り立つ店づくりを進めていた。

ただ、スピードが求められる駅そばと違い、ハンバーガーは全自動では付加価値のあるメニュー提案は難しい。ある程度、客に選ばれるメニューを提供するには、必ずどこかの工程で人の手が必要だ。メニュー数を絞って全自動にし、スピードだけを優先することもできただろうが、それではマクドナルドに勝つのは難しいだろう。

ベッカーズは時代の波に飲まれてしまい、その役割を終えるが、40年近くブランドが続き、多くの客に愛されてきたのは確かだ。JR東日本クロスステーションフーズは、この経験を今後どのように活かしていくのだろうか。

三輪 大輔 フードジャーナリスト

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みわだいすけ / Daisuke Miwa

1982年生まれ、福岡県出身。法政大学卒業後、医療関係の出版社などを経て2014年に独立。外食を中心に取材活動を行い、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。「ガイアの夜明け」に出演するなどフードジャーナリストとしての活動の幅を広げ、これまでインタビューした経営者の数は 500 名以上、外食だけでも200名近くに及ぶ。

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