最後の1店が閉店「ベッカーズ」を追い込んだ"5難" 37年の歴史に幕、ハンバーガー業界囲む厳しさ
② メニュー提案力
メニューの提案力はハンバーガー業界だけでなく、ポストコロナ社会での外食業界全体の課題になっている。理由は、外食機会の減少だ。
現在、コロナ禍前のように宴会ニーズが戻りきらず、居酒屋を中心にいわゆる2回転目の需要が喪失し、苦しい経営を強いられる店が増えた。加えて、社会保障費の負担増などで可処分所得が減っており、自由に外食に使えるお金が減っている。その中で客を惹きつけるには、「行く価値のある提案」が必須となる。
メニュー提案で成功しているのは?
ハンバーガー業界でそれに成功しているのはドムドムハンバーガーだ。「丸ごと!!カニバーガー」や「手作り厚焼きたまごバーガー」といった、他のチェーンがオペレーションなどを考えて商品化しないメニューを続々と発売し、SNSを中心に話題を集めている。その提案は業績にも結びついており、3期連続の黒字を達成している。
また、バーガーキングも他とは異なるメニュー提案で成功したチェーン店だ。同店の売りは「とてつもなく大きい」という意味を持つ「ワッパー」であり、一般的なハンバーガーの約1.4倍の大きさを持つ。そのインパクトのある大きさがSNSで耳目を集め、2023年10月には200店舗を超え、過去最大の店舗数を更新している。
これまで飲食店は立地である程度勝負ができていた。今も立地が重要なのは変わりはないが、そこにメニューの提案力がないと、すぐに市場から退場の憂き目に遭う。実際、ゼンショーが買収したロッテリアも駅前を中心に展開を行っていたが、その帰結が身売りだ。
ただ、ベッカーズも決してメニュー提案のレベルが低かったわけではない。レストランクオリティーのメニューを迅速に提供することを目標に掲げ、「国産ジビエ 鹿肉バーガー」といった特色あるメニューの提案も行ってきた。
しかし、エキナカ・駅近という立地上、こだわったメニューとはいえ、ある程度の提供スピードは必要だ。乗り換えのわずかな時間を使って食事をする客も多いことが、さらにメニュー提案を難しくしていた可能性は高い。
そして、メニュー提案力は、3つ目の問題の人手不足が絡んで複雑さを増す。
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