地図にない?埼玉「見沼たんぼ」江戸から続く理由 多くの開発計画を乗り越え「江戸の景色」残った

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黒澤さんがガイドを得意とする場所は、通船堀。見沼代用水には、東縁、西縁の2本がある。それぞれから真ん中の芝川に舟を通すための堀(運河)が通船堀。水位差を木製の関で調整し舟を通過させる仕組みで、国指定の史跡になっている。

「ただ米を作るのではだめなんです。消費地、江戸まで運ばなければ。人が運ぶと1俵、馬だと2俵、舟だと100~150俵運べた。ものを作ると、流通は絶対に必要なんですね。米とか柿渋とかを江戸に持って行き、帰りに人糞を買って運んで肥料にしたんです」(黒澤さん)

江戸時代にできていたリサイクル、循環型社会。案内してもらう参加者は、通船堀を見ながら想像を膨らませることだろう。

見沼たんぼを通過する「高速道路建設計画」

黒澤さん、北原さん、山口さんの3人が今、頭を痛めているのが、高速道路建設計画。首都高埼玉新都心線と東北道を結ぶもので、見沼田んぼのど真ん中を通ることになるらしい。今年1月、大宮国道事務所が主催した「地元検討会」が開かれた。

「導入位置は未定とされているが、さいたま市の都市計画マスタープランで導入ルートが図示されている。見沼たんぼの中心的な地域を通過することになり、環境や風景が台無しになる。見沼東部地域の渋滞を解消するためとしているが、全く解消にならないどころか、浦和インターからわずか1.8キロ付近にインターが新設され、危険極まりない。高速道路は害あって益なし、全く必要がない」。北原さんらはこう断じている。

見沼たんぼでは数多くの市民団体が活動している。さいたま市のホームページから見沼たんぼのホームページに入ると、交流ひろばの活動メンバーとして会員15、サポーター30の団体名が並ぶ。見沼たんぼ地域ガイドクラブは会員団体の一つ。多くの団体とともに、見沼たんぼの景観や環境を守る活動を続けるつもりだ。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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