楽天、「自信と不安ない交ぜシナリオ」の複雑胸中 モバイル事業に明るい兆しも見えてきたが…

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楽天は当初、2023年中のモバイル事業の単月黒字化を目指していたが、契約数の伸び悩みなどを背景として2023年5月に撤回していた。直近の契約数の増勢ぶりに手応えを得て、改めて黒字化のメドを提示してきた格好だ。

楽天モバイルの契約回線数推移

モバイル事業の前途に自信をみなぎらせた決算発表だった一方、その直前には楽天の“弱気”が垣間見えた一件もあった。障害物を迂回してつながりやすい周波数帯「プラチナバンド」の獲得に当たり、総務省へ申請した計画の中身である。

楽天モバイルは10月23日、プラチナバンドの1つである700MHz(メガヘルツ)帯で新たに3MHzの電波の割り当てを受けた。

大手通信キャリア4社の中で唯一プラチナバンドを持っていなかった楽天モバイルは、長らく割り当てを要望してきた。獲得が正式に決まったことにより、自社回線の大幅な通信品質向上が期待できる。

保守的すぎる計画の中身

国民の公共資産とも言える周波数の割り当てを受ける際、申請した事業者は周波数をどう有効活用するかについての計画を、所轄官庁である総務省へ提出する必要がある。楽天モバイルも8~9月の間に計画をとりまとめ、総務省へ提出していた。

割り当て決定後に公表された計画によれば、楽天モバイルは単年度黒字化を2026年度、プラチナバンドのサービス開始を同年3月に予定しているという。

決算説明会の場で示されたシナリオと比べると、通期黒字化までに1年のバッファーを設けていることになる。このペースを維持したまま契約数を積み上げていけるのか、楽天自身も不透明感を持っていることがうかがえる。

プラチナバンドのサービス開始時期についても、競合からは「すごい遅いペース」(KDDIの髙橋誠社長)との声が上がるほど保守的なものだった。

11月9日に開示した決算資料では「主要都市部から優先的に対応し、2024年早期でのオンエアを目指す」とし、計画の前倒しを示唆している。ただ、サービス開始までに追加で基地局整備などを進める必要があり、状況は流動的と考えておいたほうがいいだろう。

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