「無印良品」あえて過疎地で大型店を出した意味 無印良品はいかに「土着化」しているか(1)

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そこで、無印良品が地元の人々と、どのような活動ができるのか、金井は社員に宿題を出すと、同社のソーシャルグッド事業部に「暮らしの編集学校」が立ち上げられた。これは土着とは何か、各地方の価値を見出すにはどうしたらよいか考え、地元の人々と問題解決を目指す学びの場だ。

直江津の場合は、全国から公募で選ばれた20人が、5人ずつ4班に分かれて現地で合宿をした。地元のリーダーや自治体の代表者も交えて、地域に最適な無印の役割を共に考え、具体案を発表する。

直江津が抱えていた「課題」

大型商業施設は多くの来客が必要だ。直江津のある上越市の人口は1980年には21万6000人であった。これが2021年には19万人となり、2023年は18万3000人と減少している。

エルマールは直江津駅から徒歩10分で便利とは言えず、その駅の利用者も多くない。また、駐車場の数はセブン&アイ・ホールディングスにちなみ711台で、この規模の店舗では十分でない。これでは、他の企業が進出を躊躇するのは当然だ。他の有力テナントの出店も見込めないため、5000㎡の敷地を無印良品が単独で借り上げることになった。責任は金井が持つと言う。

2020年7月、世界最大の無印良品が開業する。良品計画には、店長とは別にコミュニティ・マネージャーがいる。彼らは、地域住民と交流し、共に課題を解決しながら、町づくりに貢献するのが任務である。直江津のコミュニティを任されたのは冒頭の古谷だ。

京都から単身赴任で直江津に移住した、彼の率直な印象は、こうだ。「生活するのに不便そうな場所やな」。社内外で成功を疑問視する声もあり、目標の売り上げの半分もいかないだろうと言われた。

が、直江津の人々と交流するうちにしだいに愛着がわいていった。豪雪地帯の人々は素朴で、雪かきなども共同で行うことが多い。雁木の通りが示すように、昔から「おたがいさま」の精神がある。だが住人がいなくなると、共同の雪よけ道もほころんでいく。世界最大の店舗の天井下に、地元の木材を活用した直江津を象徴する雁木造りを再現させることにした。

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