「あとがきのあとがき」 谷良一
スマホに突然電話がかかってきた。表示を見ると「島田紳助」になっている。パニックになった。さっき入れ替えたばっかりの新しい番号だ。ということは紳助さん本人からだ。
ぼくはたまらず、周囲に「紳助さんや」と叫んで、あわてて通話ボタンを押した。
紳助さんの熱い声が聞こえてきた。それは速射砲のように止まらなかった。
「M-1は谷とふたりでつくったもんや」
M-1の本を出すことになって今書いています。出版社の人がその本の帯を書いてくれと言ってまして、ぼくは無理やと断ったのですが……、とぼくが言い訳を始めると、
「おれは、おれひとりがM-1をつくったみたいに言われてるけど、ずっと気になってたんや。おれの中ではM-1は谷とふたりでつくったもんやという思いがずっとあってひっかかってたんや。帯はこっちから書かせてくれと頼みたいくらいや」
と、ぼくのことばをさえぎって言っていただいた。
涙が出てきた。ぼくのことなどすっかり忘れられてると思ってたのに。
そのあと、なんともうれしいことばが次から次へとショートメールに送られてきた。帯には書き切れない。
また電話がかかってきた。
「こんなんでいいかな」
「帯には長すぎます。あとがきにさせてください」
引退してからは、一切マスコミに登場することを拒否してきた紳助さんが、まさかこんなに熱い言葉を贈ってくださるとは思わなかった。