令和ロマンの優勝で昨年末大いに盛り上がった「M-1グランプリ2023」。今回で19回目を数えるこの大会は、下火になっていた漫才を立て直すべく、元吉本興業社員の谷良一氏がゼロから立ち上げたものでした。
谷氏がM-1創設の裏話をつづった『M-1はじめました。』は、一つの新規事業の立ち上げ物語として読むこともできます。経営学者の入山章栄氏に本書の読みどころを聞きました。
上司からの理不尽極まりない丸投げ
この本を知ったのは、書評の仕事で候補となる推薦図書に含まれていたときだ。たいていスルーするが、「M-1グランプリ」はもともと大好きだったので読んでみると、これが面白い! まるで「プロジェクトX」のようだった。
希望する仕事ができずにくすぶっていた社員が、上司から「不振事業をどうにかしろ」と丸投げされる。理不尽極まりないが、パワーのある人には逆らえない――企業では、いかにもありそうな状況だ。
この本の著者も吉本興業の木村政雄常務から急に呼び出され、「漫才を盛り上げろ」という漠然としたミッションを与えられる。
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