ところで、新規事業が成功すると、自分の手柄にする人が山ほど出てくる。実はこの私でさえ、「俺が入山を育てた」とおっしゃる方が出てくる。決まって、数回お会いしただけだったりするのだが。M-1ほど成功すれば、「これは俺が作ったものだ」と言い出す人が現れるのは無理もないことかもしれない。そういうエピソードも入っていて、新規事業のリアルを捉えているなと感じる。
それもあって個人的に素晴らしいと思ったのが、本の最後に、島田紳助さんの寄稿が載っていたことだ。
世間ではほとんどの人が、M-1は島田さん1人の発案でできたと思っているだろう。しかし現実には、著者がもがく中で島田さんに相談を持ちかけて生み出された果実だったのだ。
島田紳助さんの証言がもたらす価値
表の世界でみこしに乗る人の背後には、それを動かす裏方が存在し、陰のキーパーソンだったという話は少なくない。しかし、裏方が当事者目線でいくら頑張ったんだと主張しても、説得力はない。
そこに、芸能界を引退してからメディアに出ていなかった島田さんが「谷と一緒に作ったM-1」だと証言する。それで裏がとれて本当の話だとわかるところは、この本の価値を高めているポイントだと思う。
欲を言えば、著者をプロジェクトに抜擢した木村常務にもあとがきに登場してもらいたかった。プロジェクトでは、誰がやるかは非常に重要だ。思いつきで著者を指名したのではなく、おそらく何らかの意図や感覚があったはずだ。その意味で言うと、木村常務こそがM-1誕生の最大の功労者かもしれない。
それはさておき、難解な技術や馴染みのない新製品のプロジェクトではなく、多くの人が親しんでいるM-1のストーリーなので、誰にでも読みやすいはずだ。新規事業の王道を学べる本として、また、イノベーション創出のヒントが詰まった一冊として、ビジネスパーソンの方々にぜひ読んでいただきたい。
(構成:渡部典子)
「M-1はじめました。」が10倍面白くなる
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