「リネン係がおらず、部屋を閉鎖…」「観光客は来るのに、従業員がいない…」《働く人の給料が安すぎる》のは、日本の観光業の大問題だ

永谷さんは「人は来ているけどきちんとお金が落ちていない。特に地方はその傾向が強い」という現状は歯がゆくて仕方ないと言います(写真:hashimoto/PIXTA)
2024年の訪日外国人観光客は、数も観光消費額も過去最高記録を更新。好況に沸くインバウンドに大きな期待が寄せられる一方で、「日本の観光業界は、きちんと稼げていない」とシビアな現実を指摘する声もある。
発するのは、立教大学客員教授の永谷亜矢子氏だ。
永谷氏はリクルートで、広告営業マンや編集者としての誌面作りを経験。ファッションイベント「東京ガールズコレクション」には立ち上げから関わり、後に移籍した吉本興行ではPRを統括し、海外での番組制作も経験した。
そんな「異色の経歴を持つ叩き上げ」にとって、「人は来ているけどきちんとお金が落ちていない。特に地方はその傾向が強い」という現状は歯がゆくて仕方ないと言う。そんな思いを1冊の本にまとめたのが新刊『観光〝未〟立国~ニッポンの現状~』である。
本記事では、同書を再編集しながら、日本の観光業界が抱える問題点を解説する。
観光客は来るのに、働き手がいない
インバウンドにしても、日本人による国内旅行にしても、日本の観光業がこれから伸びていくことは、あらゆる統計が物語っています。
「またとない商機」ですが、観光地から見たときにそれを「受け入れる体制」が整備されているとは言い難い現状があります。
たとえば、ある地方のビジネスホテルや旅館には、何を仕掛けたわけでもないのに大勢の観光客が押し寄せるようになりました。普通に考えたら、喜ばしいことです。
ところが、折からの円安で外国人労働者が日本で稼げなくなってしまったことで労働者の数が減り、シーツやベッドカバーを交換するリネン係がいなくなってしまいました。
その結果、「部屋は空いているのに、人手不足で現場を回せないから客室を2割ほど締めざるをえない」という状況になったのです。
これは、観光業界に蔓延する「人手不足」「機会損失」の問題がわかりやすい事例ですが、話は宿泊事業者の従業員不足だけにとどまりません。
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