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山梨中央銀行が「やまなし地域デザイン」を設立、地方創生に邁進する異色の銀行マンが主導、中長期目線で「観光」と「SNS運用」を担う理由

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山梨中央銀行が4月に立ち上げた「やまなし地域デザイン」。社長に就いた渡邊正雄は突き抜けたアイデアを持つ異色の銀行マンだ(記者撮影)
会社を動かすのは現場のビジネスパーソンだ。人気商品やサービスが生まれた背景、新たな挑戦の狙いとは。本連載では、その仕掛け人を直撃する。

お堅い審査部門が嫌いだったわけではない。現に17年も在籍した。でも、心の底では営業として駆け回りたいと夢見ていた。

転機は意外な形で訪れた。4月1日、山梨中央銀行が設立した新会社「やまなし地域デザイン」。観光・マーケティング・脱炭素と、およそ銀行らしからぬ新規事業を率いるのは、社長に就いた渡邊正雄(54歳)だ。「一度は社長と呼ばれてみたかった」とおどける渡邊は、突き抜けたアイデアで地方創生の仕掛けを放つ異色の銀行マンである。

審査部門から現場に戻って開花した才能

生まれ育った山梨の銀行に入ったのは1993年。営業として支店を渡り歩き、3カ店目となる塩山支店では地元スーパーの再建に奔走した。ひたむきな姿勢が目に留まってか、入行11年目にして審査部門に引き抜かれる。1年間、銀行秘伝の審査ノウハウを吸収したのち現場へ戻る、はずだった。

フタを開ければ、選抜された若手4人のうち自分だけが「片道切符」だった。約束の1年が経っても異動の内示が出てこない。結局、銀行員人生の半分以上を与信管理や当局との折衝に捧げることになる。

待ち焦がれた現場に戻った頃には、入行から四半世紀が経っていた。コロナ禍の混乱が続く2020年6月、渡邊は河口湖支店に支店長として赴任する。地元ホテルの支援に駆けずり回る傍ら、長きにわたった本部勤務で膨張した営業への渇望が「河口湖で爆発した」(渡邊)。部下には目先の営業成績を追う代わりに、顧客との中長期的な関係を築くよう推奨。自らも営業エリア内外の顧客と接点を持ち、時には顧客同士の縁も取り持った。

2022年に河口湖で開催された東京ガールズコレクションには、約5750人が来場した(提供:W TOKYO)

見返りを抜きにして築いた縁は、予想だにしない場面で花を開かせた。2022年、2023年に富士河口湖町で開かれた「東京ガールズコレクション」が好例だ。主催者の幹部と意気投合し、地元へのイベント誘致が実現。山梨中銀も協賛に加わり、地場産品の紹介やインフルエンサーによる観光情報の発信へとつながった。

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