TBSサンモニ「AI誤報」騒動に見たメディアの課題 テレビのネット化でより嘘を見抜く力が必要に?

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いまや多くの情報番組に「バズりネタ」紹介コーナーがあり、ほんわかと癒やされる動物モノから、いわゆる「世界の衝撃映像」系まで、幅広く取り扱っている。それだけ数字(視聴率)が取れるということなのだろう。あるいは、効率よくコンテンツを作ることができるのかもしれない。

こうしたネット主体の情報収集のメリットとしては、まず「少ないタイムラグで発信できる」ことが挙げられる。海外の放送局から買い付けたり、現地に撮影スタッフを向かわせたりしなくても、容易に「世界の今」を伝えられる。しかし、この特性は反面、「賞味期限が早く、スピードを重視するあまり、十分に精査する時間的余裕がない」ことにもつながる。

ネット上で流通している「真偽の確証が取れない情報」を、そのままテレビで流してしまう。そうした失敗例として思い出すのは、2017年5月に「ワイドナショー」(フジテレビ系)で起きた一件だ。

スタジオジブリの宮崎駿監督が、名作を発表するたびに「人生で最高に引退したい気分」(天空の城ラピュタ)、「100年に1度の決意。これを最後に引退」(もののけ姫)などと発言していたと紹介したところ、X(当時はツイッター)に投稿された、創作の「ネタツイート(現ポスト)」の内容ではないかとの指摘が相次ぎ、番組は「実際には宮崎駿氏の発言ではなかった」と謝罪した。ネットには以前から、人気ワインのキャッチコピーになぞらえ、毎年の完成度を評価する「ボジョレーヌーヴォー構文」がある。おそらく「引退宣言」も、それを意識して書かれたと思われるが、番組スタッフは真に受けてしまったのだろう。

ちなみに、その翌月にも、同じくフジテレビで「釣られた」事例があった。情報番組「ノンストップ」で、赤城乳業のアイス「ガリガリ君」を扱った際に、実在しない「火星ヤシ味」をあわせて紹介し、翌日に謝罪。ネットユーザーが作成した画像を信じてしまったと話題になった。

ネット経由での取材は「コスパ良好」

それから6年、AIをはじめとする技術の進歩は著しいが、ネットを活用した取材や「裏取り」の手段は(恥ずかしながら筆者自身も含めて)、革新的とまで言える変化はないように感じられる。

天災や事件が起こると、現地からのSNS投稿に、取材依頼が殺到する。「○○テレビです。詳細をDM(ダイレクトメッセージ)でやりとりできませんか?」などと各社からの依頼がぶら下がり、マスコミによるSNSでの情報収集に嫌悪感を持つ、第三者のユーザーが「ダメです」と代返する伝統芸は、いまもネットの様式美となっている。

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