TBSサンモニ「AI誤報」騒動に見たメディアの課題 テレビのネット化でより嘘を見抜く力が必要に?

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生成AIとは、文章や画像などを、文字通り「生成」するAI技術を指す。その代表例である「ChatGPT」ですら、ようやく公開から丸1年。件の画像もなんらかの技術を使った可能性はあるかもしれないが、10年近く前となれば、「生成AIでつくられた」と呼ぶのは難しいだろう。

あわせて番組側は、「灰にまみれたパレスチナの子どもたち」とされる画像も、「『生成AIが作ったもの』とお伝えしましたが、現段階で『生成AIが作った』と断定できる根拠はなく、断定した表現は誤り」だとした。

すっかり定着したネット・SNSからのネタ探し

イスラエル・パレスチナをはじめとする中東情勢は、人命や国際問題にかかわる、きわめてセンシティブな話題だ。あくまで話の主題が「生成AI」だったとしても、最低限の裏取り(事実確認)は必要だろう。もとより、サンデーモーニングはリベラル的なイメージが強い番組とあって、結果的に、SNSでは「意図的に行われたのでは」のように疑う声が出てしまっている。

AIによる画像生成は、まさに日進月歩のスピードで、精度が高まっている。その技術革新は数カ月前と比較しても、雲泥の差と言えるだろう。先日も、岸田文雄首相が卑猥な発言をするようなフェイク動画が、日本テレビのロゴ入りで投稿されて、話題になっている。

そんな現状もあって、「AI時代のマスメディア」も興味深いが、今回は「情報の精査」について考えてみよう。

サンデーモーニングは、誤報に至った経緯を明かしていないため、なぜ起きてしまったかは不明だ。ただ昨今の事情から、ひとつ考えられるのは、インターネットの普及によって、マスメディアにおいても「SNSからのネタ探し」が定着していることだろう。

筆者はネットメディアの編集者として、10年以上働いてきた経験がある。私がこの業界に入った10年前には、まだ「バズる」という表現は一般的ではなかったが、そうしたジャンルの話題は、ほとんどネット専業メディアの独擅場だった。しかし、スポーツ紙をはじめとする紙メディアの参入を経て、テレビ各社も取り入れるようになっていった。

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