TBSサンモニ「AI誤報」騒動に見たメディアの課題 テレビのネット化でより嘘を見抜く力が必要に?
取材依頼そのものは人力だとしても、「ネタ」の早期発見にAI技術を用いることはある。ニュースアプリ「NewsDigest」などを展開する、IT報道ベンチャーのJX通信社は、ビジネス向けの「FASTALERT」を提供している。速報性と情報量、正確性を売りとしており、公式サイトによると、民放キー局の採用シェア100%だという。こうしたサービスを活用することで、より効率的に「旬の話題」を探せるようになった。
反対に、視聴者みずからが、放送局に素材提供するパターンもある。NHKや民放キー局各社は、写真や映像の投稿サイトを設置し、そこへのアップロードを呼びかけている。スマートフォンやパケット定額サービスの普及で、誰しもが「報道カメラマン」になれるという位置づけだ。
ただ、いずれの投稿サイトも、規約を見る限り、対価は金銭ではなく「自分の写真・映像がテレビに採用された」という体験ベースが主なようだ。SNSでの依頼ともども、ネット経由での取材が、テレビ局にとって「コスパ良好」なのは間違いないだろう。
日増しに「うそを見抜く力」が求められている
ここまで紹介してきたように、SNSを中心としたネタ探しには、メリットもデメリットもある。なるべく失敗しないためには、情報の精査を怠らず、「釣られない」ように制作側が意識し続けることが必要だ。
ネット掲示板「2ちゃんねる」(現5ちゃんねる)創設者の西村博之(ひろゆき)氏が、「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」と評したのは、2000年のことだった。それから四半世紀近くの時がたち、テレビがネット化していく昨今を鑑みるに、日増しにテレビの視聴者にも「うそを見抜く力」が求められているのではないか。
朝から晩まで疑心暗鬼になる必要はないが、ふとした違和感に気づけるアンテナは必要だ。今をときめく生成AIですら「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる課題を持っている。事実に基づかない「知ったかぶり」をしてしまうのだ。どれだけのビッグデータを根拠にしていても、完全に信用できるとは言えない。
取材対象者の言うことを、うのみにしない。さかのぼれば、「取材は足で稼ぐ」の時代においても、ネタ元が信頼できる人物かを見極め、情報の裏にある「真意」を探る必要はあった。それがSNSの登場で揺らぎ、AI普及でトドメを刺されるとしたら——。自戒の念も込めて、私たちは「人間だからこその強み」を見つめ直す岐路に立たされているのかもしれない。
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