2つ目が優秀なパートナー企業の育成だ。仮によいソリューションを持っていても、資金がなければ実現できない。可能性を秘めた会社があれば育成も進めていきたい。単に収益を上げることを目的とせずに、投資家にリスクをとってもらい、成長の支援を促すことが、コンソーシアムとしての責務でもある。
――エンジン車よりもEVは電池コストが高く利益を上げにくいとされています。どうすればEVで収益性を確立できるのでしょうか。
スマートフォンを考えてもハードウェアの組み立ては利益が薄い。スマホのビジネスの利益源はソフトウェアにある。EVも同じだ。ソフトウェアを随時アップデートすることで利益を出せる。例えば、ドライブモニターといったソフトウェアのアップデートにお金を払ってもらうような仕組みだ。
コンソーシアムの参画企業のうち30%がソフトの会社で、利益が享受できる仕組みになっている。ハードウェアはできるだけシンプルに、モジュール化することでコストダウンできる。利益の源泉としてハードウェアよりソフトウェアが大きくなる。
――世界のEVシフトのスピードは想定どおりでしょうか。
国によってスピードは違うが順調に進んでいると思う。
中国では、2015年から7〜8年で急激にEV市場が成長してきた。テスラが中国市場に参入したことで、中国の自動車産業へのプレッシャーをかけた。NIO(上海蔚来汽車)といった新興EVメーカーも現れた。コロナ禍による都市封鎖も契機にソフトウェアの開発が進んだ。物流や配達、モビリティでのユーザーフレンドリーなスマート化が進み、市場自体が大きく変わった。
タイは中国の自動車メーカーの参入によってEV化が早く進むだろう。インドでもESGの要求の高まりを受けてEV市場が立ち上がっている。
ユーザー体験を深めていく必要がある
――日本の現状をどのように見ていますか。一般にEV化が遅れていると言われていますが。
日本市場だけを見れば、自動車業界は今でも十分に稼いでいる。だが、世界を見るとテスラやBYDと比べると遅れている。日本は自動車部品に強みがあるが、まだソフトウェア主導ではないからだ。
EV化を進めると同時に、ユーザー体験も深めていかないといけない。そのためにもAIの強化、自動運転やコネクテッドの技術開発をスピード感を持って進めることが必要だ。中国とアメリカではソフトウェア競争がすでに始まっている。
製造面では日本は強みを持っている。日系サプライヤーが持っているタイとインドの生産拠点を活用すれば、日本市場向けに価格を抑えたEVを提供できる。そうであれば、早々に中国並みのEVの普及もできる。われわれはいいタイミングで日本に来ることができた。
――テスラとBYDはすでにEVで利益を出しています。EV化に遅れている日系メーカーに勝算はあるでしょうか。
勝ち負けの問題ではない。コロナ禍以降に状況は変わり、もはや競争だけではいい結果を生み出せない。日産自動車とルノーが連携しているように将来を見据えた協力が必要だろう。
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