金融への介入を強める習近平指導部。政治による統制は危うい賭けだ。

共産党の意思決定を行う常務委員の面々(写真:Getty Images)
李克強前首相の突然の死、日本人駐在員の逮捕など不吉なニュースが続く中国。経済成長が鈍化し、直接投資が初のマイナスになった「世界の市場」から企業が逃げ始めた。
『週刊東洋経済』11月18日号の第1特集は「絶望の中国ビジネス」。共産党が経済よりも大事にしている「国家安全」は中国をどう変えていくのか? 日本企業のビジネスへの影響は? 匿名座談会や特別対談など、豊富な記事でその答えをお届けする。
10月24日、習近平が国家主席に就任してから初めて中国人民銀行(中央銀行)を訪問した──。
このニュースは当日中にロイター通信やブルームバーグが報じたが、11月7日時点で公式発表はなく、中国国内でも報道はされていない。要人の動静としては異例であり、機微な問題として扱われていることがわかる。
それから程ない10月30日、31日の2日間、中央金融工作会議が北京で開催された。
習が出席して金融分野の重要会議が開かれるのは2017年以来。終了後の声明文には「金融強国の建設」がうたわれ、その実現に向けて中国共産党中央の指導を強化する方向性が示された。
いま中国で起きているのは、金融という専門性が強い領域も党の支配下に置くという大転換だ。習の人民銀行訪問は、その象徴と位置づけることができる。
党の統治を脅かす国内外のリスクを抑え込むために「国家安全」を最優先した布陣が採用され、金融・経済分野の専門家はその権限を次々に奪われているのだ。
政府に優越する党の権力構造
その詳細を理解するには、まず政府に優越する党の権力構造を頭に入れる必要がある。
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら