カルビー「堅あげポテト」の挑戦

独占取材・ロングセラー商品物語

■価値を伝えるべき人は誰だったのか

 商品は決して万人受けするものではない。「価値が判る人」を囲い込んでいく。そのために、エリア毎に確実に拡大する展開がとられた。通常品は誰もが手に取る商品。「堅あげポテト」は判る人に手に取ってもらう商品。手作り感や職人仕事という価値を共有できる人がターゲットなのだ。ターゲットは年齢の属性でセグメントするというより、価値感が重要である。それ故、当初は20代を中心としたヒットであったが、その後ユーザー層は40代にまで拡大した。

 ポジショニングは「自分で買って食べるポテトチップス」。親から与えられたり、家人が買ってきたりしたものを食べるのではない。「親しみ」と「こだわり・通好み」はトレードオフの関係にある。あくまで後者のポジションを取るため、パッケージにはおなじみのジャガイモのキャラクターは存在しない。

 大ヒットの兆しを感じる「堅あげポテト」には1点、大きな弱点があった。生産だ。

 通常のポテトチップスは「じゃがいもの選別→水洗い・皮むき→スライス→水洗い→180℃で2~3分揚げる」という生産プロセスをとる。一方、堅あげポテトは「じゃがいもの選別→水洗い・皮むき→スライス→180℃より低い温度で8~10分揚げる」と、スライス後の水洗いをせず、じっくり揚げ時間をかけるという方式だ。その分、うま味は逃げないが、素材のじゃがいもの選別に妥協ができない。また、揚げ時間は生産効率に直結する。大量生産ができないという弱点になるのである。

 「もっと作れば売れるのに作れない」というもどかしさが今度は襲ってきた。しかし、「うすしお味」「ブラックペッパー」の2種のフレーバーでエリアを広げて着実に売っていく。社内では焦らずじっくりと展開することが暗黙の了解になっていた。

 そして、機は熟した。市場のニーズの高まりを受けて、2010年度についに「のり味」「コンソメ」の2種を加え、全国の需給担当者とともに、需給バランスの最適化を図り、市場ニーズとのミスマッチを解消した。

 特筆すべきは、マーケティング要諦である「整合性」だ。そして、その整合性を生み出しているのは、「堅あげポテト」を支えようとする「社内ファン」の力に負うところが大きい。

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