業界では95年の発売時に「じゃがりこショック」が起きたといわれているという。その従来にないポジショニング故だ。スナック菓子は1964年発売の「かっぱえびせん」にしてもポテトチップスにしても、袋をバリバリと開いて、みんなでつまんでワイワイと軽く食べる物だ。それに対してじゃがりこはカップ容器に指を突っ込んで、固い食感を一人で楽しんで食べる。市場がじゃがりこを受け入れたということは、従来の商品に対して、「新たな価値の定義」が求められていることだと社内では解釈したという。
ポテトチップスという商品の価値定義を変える。従来見たこともないようなポテトチップスを作るという大きなチャレンジが始まった。開発者が目を付けたのは、日本では商品化されていない米国の「釜揚げタイプ」のポテトチップスだ。従来のポテトチップスより分厚く、カリカリした食感が楽しめる。
通常のポテトチップスで人気のフレーバーで「味のバリエーション」も訴求したものの売れず、97年にはストレートに「美味しさ」を前面に出して訴えかけたが、やはり市場の反応は芳しくなかった。各種のリサーチや地域限定テスト販売などを地道に続けるが、大きな手応えを得られないもどかしい状態が続いた。
ついに98年。「噛むほどうまい!」というコンセプトにたどりつき、この商品の価値は「噛みしめる美味さ」であることが明確化できた。フレーバーはシンプルな「うすしお味」と「ブラックペッパー」の2種に確定した。
「商品に対する確たる手応えをつかむまでの売れない日々が乗り切れたのは、社内にしっかりファンができていたからです」と担当者は営業マンだった当時を振り返る。彼を支えたのは、「食べてもらえればわかる」という商品価値に対する確信だった。そのため、試食のローラー作戦もひたすら商品の価値を信じて実行したという。その甲斐もあって、商品ユーザーの食用のきっかけは「人に勧められて」が多いという。市場に価値が認められたのだ。
トピックボードAD
有料会員限定記事
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画

【日本国債が“買い手不足”に】異例の発行計画変更/超長期債の金利が急騰/20年債の入札が不調/日銀の代わりに誰が買い支える?/民間の銀行が買えない・買わない事情/今後起こりうる悪影響【ニュース解説】

【雇用統計 異例の下方修正】発生確率は“360年に1回”の超レアケース/民間部門の伸びが4月と5月で急変/利下げ見送りはFRB議長の失態?/9月のFOMC前にも注目点【ニュース解説】

【造船ニッポンの凋落】最大手が2位を子会社化/今治造船の社長が抱く「危機感」/広がる中韓との差/オールジャパン体制/主導権が重工系から造船専業に/日米関税交渉の影響/日本勢の巻き返し【ニュース解説】

【アパレル未経験から3年で月商1億円】自らモデルに/ライブ配信でファン獲得/キッズ服で我慢した経験/資金調達に苦戦/学生時代に創業/外資系IT企業との二刀流【ドキュメンタリー 仕事図鑑(田中絢子)】
ビジネス
アクセスランキング
アクセスランキング
- 1時間
- 24時間
- 週間
- 月間
- シェア
※過去1ヶ月以内の記事が対象
※過去1ヵ月以内の記事が対象
※過去1ヵ月以内の記事が対象
※過去1ヵ月以内の記事が対象
※週間いいねとシェアの合計(増分)
会員記事アクセスランキング
- 1時間
- 24時間
- 週間
- 月間
※過去1ヵ月以内の会員記事が対象
※過去1ヵ月以内の会員記事が対象
※過去1ヵ月以内の会員記事が対象
トレンドウォッチAD
週刊東洋経済の最新号
- 新刊
- ランキング
無料会員登録はこちら
ログインはこちら