日本企業がパレスチナ問題で注がれる厳しい視線 日立建機やトヨタ、ソニー、三菱自動車が名指し

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一方、トヨタ、ソニー、三菱自動車の3社は軍や政府に直接販売しているかどうかについて言及しなかった。

3社については、「イスラエル国防省がソニー製のカメラを購入」「イスラエルの軍と国防省でトヨタ製自動車が使用」「イスラエル軍が2014年に約3500台の三菱自動車製自動車を購入」などと、Who Profits Research Centerのデータベースに掲載されている。

トヨタは、「イスラエルにおける当社の商業活動は、1967年の国境内で行われています」「1967年の国境以外に店舗を持ったり、販売(または直接販売)を行ったりすることはありません。それ以上の詳細は控えさせていただきます」と、具体的な回答を避けた。

ソニーは「個別の取引に対するコメントはしていない」と回答。「ソニーグループでは、製品・技術の平和利用に関する基本方針を制定しており、武器の開発、製造、販売、供給、あるいは、それらのための技術供与は行っていない」とコメントするにとどまった。

三菱自動車からは、期日までの回答はしないとの返答があった。

人権リスクに対する認識は十分か

「イスラエル企業と提携したり、イスラエルで事業をすることは、必然的に人権侵害に加担することであると認識するべきだ」

大阪女学院大学・大学院教授の高橋宗瑠氏はそう指摘する。高橋氏は、国連人権高等弁務官事務所パレスチナ副代表を務めた経験を持つ。企業間の提携も問題と考えるのは、「あらゆるイスラエル企業が入植地に入っており、占領政策に加担している」とみているからだ。

すでに50万人が住んでいるともいわれる入植地は、イスラエルにとって「一地方都市」のような存在。イスラエルで商業活動をする企業であれば、入植地のみを避けることは難しい状況にある。

日本の外務省は各国・地域の基礎情報を紹介するウェブページ内で、イスラエルの占領地や入植地に関わる経済活動を行う場合の注意を次のように呼びかけている。「金融上、風評上及び法的なリスクがあり得る他、そうした活動への関与が、人権侵害とされる可能性があり得ることについて、十分留意する必要がある」。

一般の消費者や投資家など国内の多くの人々の間では、イスラエルにかかるリスクがよく知られていない。しかし日本企業は、イスラエル企業との提携や事業について、人権リスクという観点から見直す時期が来ているのではないだろうか。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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