やすしさんと言えば、なんといっても酒でしょう。酒にまつわるエピソードは数知れません。朝7時伊丹発の羽田行きの飛行機を待っているときのことです。
現れたやすしさんは「おう、ビール飲むかっ?」と聞いてきました。ぼくが酒を飲むのを知っていたのです。そして、売店で「ビール大ふたつ」と頼むと、大きな紙コップに注がれたビールをぼくに差し出しました。
夏の暑いときに飲むビールは最高ですが、真冬の2月、早朝6時です。ただでさえ寒いのに、キンキンに冷えたビールがうまいはずがありません。ぼくはビールをあんなに震えながら飲んだことはありません。
それでもやすしさんには言えないので黙って飲んでましたが、心の中でビール売り場の店員に、「真冬の朝にビールを売るな!」と毒づいていました。
食堂車でのウイスキーの思い出
やすきよの移動は大抵飛行機でしたが、新幹線でやすしさんと二人っきりで東京から大阪に帰ったことがあります。やすしさんは乗り込むと席に着かず、食堂車に連れて行かれました。当時新幹線には食堂車があって、移動の最中に食事を摂ることができました。今から思うとほんとに良き時代でした。
やすしさんは席に着くとすぐにお姉さんを呼んで、ウイスキーを注文しました。食堂車においてあるのはサントリーオールドのミニボトルです。
「これはすぐになくなるんや」と言って、やすしさんは一挙に5本頼みました。氷と水をもらって、セルロイドのコップで水割りをつくる。ぼくにもつくってくれて、飲めと言います。ミニボトルはすぐに空いてしまい、追加でまた5本注文しました。
そして、空いたミニボトルを新幹線の窓枠に並べていく。7、8本が並んだときにやすしさんがまた追加注文をします。
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