「菜食主義は疲れやすい」が嘘でない医学的理由 20~49歳「日本女性の3割」は"かくれ貧血"?

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女性と男性が互いの長所を生かし、共に活躍できる社会は理想的だ。ただ、女性には月経があり、男性と生物学的に大きな違いがある。鉄が欠乏しやすいせいで疲れやすかったり、 イライラしやすかったり、と様々な症状が出る。

医療者の意識改革も必要

しかし、鉄欠乏による症状は日本社会では過少評価されており、多くの人が治療を受けられず、放置されている。この状況が続くなら、女性がアクティブに活躍する社会の足を引っ張り、大きな社会損失に繋がるのではと、私は懸念している。

鉄欠乏に対する意識を変え、社会として治療を“あたりまえ”にする必要がある。

医療者の意識改革も必要だ。貧血で受診した方を鉄剤で治療するのはよいが、ヘモグロビン値が回復すると治療を終了してしまう。結局は大抵2年後くらいに再発し、また治療に通うことになる。その2年の大半を鉄欠乏の状態で過ごすことになる。

医療者は、女性の貧血が月経に起因し慢性的に治療が必要であること、貧血でなく鉄欠乏状態をも治療対象とすべきことについて、認識を新たにしなくてはならない。

また、鉄欠乏症に関する研究が不足していることも、診断できずに見逃され、多くの女性が健康を損ねる原因となっている。鉄欠乏の程度によりどのような症状が出現するのか、そして鉄補充が身体症状の改善やパフォーマンス向上に役立つのか、明らかにすべきだ。

女性の皆さんにはぜひ、健康診断や人間ドックを受診する際、フェリチンなど鉄欠乏の指標となる採血項目が含まれる検査機関を選択し、積極的にご自身の血液の“鉄加減”を調べてみていただきたい。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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