「菜食主義は疲れやすい」が嘘でない医学的理由 20~49歳「日本女性の3割」は"かくれ貧血"?

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さて、これまで見てきたように、鉄は体の中で大きく3つの形で存在している。

●「機能鉄」=ヘモグロビン

●「輸送鉄」=血清鉄(トランスフェリンと結合)

●「貯蔵鉄」=フェリチン

かくれ貧血の指標としては、先のトランスフェリン関連の数値(TIBC)を見るよりも、フェリチンを見る方法が普及している。

ただしその基準値については、専門家の間でも議論が分かれている。

「かくれ貧血」を見つけるもう一つの方法

WHOが推奨する月経のある年代の女性の正常値はフェリチン15μg/L以上、かつヘモグロビン12g/dL以上だが、最近では、フェリチン30~50μg/L以上、かつヘモグロビン13g/dL以上を正常範囲とすべきとする研究者が増えている。要するに、従来の基準をギリギリ満たすだけでは足りない、ということだ。

私はいずれにせよ、法律の定める定期健康診断に、ヘモグロビン値(貧血)等だけでなく血清鉄、TIBC、フェリチンの3項目を加え、鉄欠乏の人を積極的に見つけて鉄補充をおこなうべきと考えている。鉄剤で鉄欠乏を改善するだけで慢性頭痛が改善した、といった例も、枚挙に暇がない。

成人女性の鉄欠乏率が高いのは、やはり月経に伴う出血が主な原因だ。

今年発表されたアメリカでの研究では、21歳までの女性・女児のおよそ17%が、WHOの基準値に基づく鉄欠乏症だった。さらに、フェリチンの基準値を50μg/Lと高くしてデータを分析すると、月経のある女性の77パーセントが鉄欠乏とみなされた。日本でも、状況は大きくは変わらないだろう。

今年、国際産科婦人科連合(FIGO)は、その歴史上初めて、「月経のあるすべての女性と女児は、貧血だけでなく、妊娠中以外も定期的に鉄欠乏症の検査を受けるべきである」という勧告を発表した。

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