11月FOMCで「利上げの霧」が晴れるこれだけの証拠 いよいよ金融引き締めの終わりが見えてきた

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縮小

タームプレミアムは、端的に言えば短期金利要因で説明できない部分、すなわち需給であり、それは国債発行計画(財政政策の見通し)やFRBのバランスシート戦略(量的緩和・引き締め)など「将来の不確実性」によって決定される。例えば2021年央のタームプレミアム上昇は、FRBがいつ量的緩和の段階的縮小に着手するのかが市場参加者の中心的テーマとなった際に観察された。

ただ一口に需給と言っても、タームプレミアムが内包する要素は多岐にわたるため、その予想は困難だ。たとえば、中国や日本など外貨準備としてアメリカ国債を保有する国々がどれくらいのペースでアメリカ国債を購入・削減するかなどといった予測不可能な要因を含む。

また海外金利の動向も重要だ。アメリカよりも金利の低い国が多ければ、それらの国の投資家が高い金利を求めてアメリカ国債投資を加速することでタームプレミアムは低下する。言うまでも、それらを予測するのは極めて難しい。

FRB高官の発言の変化に見え隠れする内容を注視

このように、タームプレミアム主導でアメリカ長期金利が上昇する中、FRB高官は、ここへ来て長期金利の上昇ペースを抑えるような発言を連発している。

10月5日のメアリー・C・デイリー・サンフランシスコ連銀総裁を皮切りに、複数のFRB高官が「長期金利の上昇がFRBの利上げを肩代わりする(した)」という趣旨の発言をすると、10月19日にはジェローム・パウエルFRB議長も追随した。

こうした発言からは、10月31~11月1日に開催されているFOMCにおける利上げ停止を、あらかじめ正当化する意図が見え隠れする。またそれ以上に重要なのは、それまでFRBは早期の利下げを織り込む金融市場参加者の見通しを強く否定し、長期金利の上昇を促すような発言を多くしてきたからだ。

それとは一転してFRBが金融引き締めの効果を弱める発言をしたことは注目に値する。これをもって、FRBが方向転換したとは言い切れないものの、後から振り返った時にはこの発言が転換点であったとの認識に至るのではないかと筆者は考えている。

11月の株式市場は引き続きアメリカ長期金利の動向に左右されそうだ。だが、FRB高官がインフレ沈静化に一定の満足感を示すことで金融引き締めの終わりが見え、また利上げと併行して実施されてきたバランスシート縮小についてその停止が議論されれば、長期金利の低下が促され、9月下旬以降の金融市場を覆った霧が晴れるのではないか。

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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