西武池袋本店で進む「トンデモ改装」仰天の中身 アパレル大幅縮小、ブランドも10社だけか

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その上で、高級ブランドや食料品領域については、出店しているテナントを売上高や利益貢献度の大きい順に並べ、高級ブランドについては上位10社程度、食料品については上位20社程度に絞ることが俎上に載せられているという。

それより売上高や利益貢献度が下回っているテナントについては「事情にかかわらずすべて撤退」との方針を示し、テナントの選別を進めるよう指示しているというのだ。

こうした方針に対してそごう・西武の関係者は、「効率を重視するという考え方は理解できるが、単純に売り上げや利益貢献度が高い順に並べてもうまくいくわけがない」と憤る。

「百貨店はさまざまな商品を並べ、買い回りや”ついで買い”をしてもらうことで利益を得るビジネスモデルだ。それができるのは、比較対象となるテナントがあってこそ。そうした百貨店のビジネスモデルを無視した、あまりに機械的な商品政策だ。これではフォートレスが買収時に掲げた”百貨店の再成長”は達成できない」(そごう・西武関係者)。

池袋西武はもう終わる

ファンド関係者は、「そうしたビジネスモデルでうまくいくのであれば不振に陥ることなく、売却されることもなかったのでは」と指摘する。

だが、そごう・西武関係者は「かつて静岡店や船橋店で利益率の低いレストランを閉め婦人服のフロアを増やしたことがあるが、売り上げが激減して失敗した。テナント数を減らすにしても、バランスよく配置することが重要だ」と反論する。

大手百貨店としては61年ぶりとなるストライキを実施したが……(編集部撮影)

万が一、現在の方針を実行していけば、すでに出店しているテナントの反発は必至。移転や撤退に伴う費用を請求されたり、最悪の場合、訴訟に発展したりする可能性も否定できない。

そのため別のそごう・西武関係者は「ブランドの中には、出店してもらった経緯や、その後の付き合いなどの関係からむげにできないものも多数あり、さまざまなシミュレーションを行って、どうにかして残せないか努力している」と明かす。

新経営陣が就任して日が浅く、再建は始まったばかり。池袋西武の改装も今後修正を重ねていくと思われる。が、別の都心百貨店の幹部は「売り場面積が半分になったうえ、機械的な商品政策を進めていれば、池袋西武はもう終わる。われわれにとっては大きなチャンスだ」とほくそ笑む。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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