65歳から必要な資産収入「4200万円」どう作るか 65歳時に2800万円あれば4000万円にできる?

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ところで、「引き出し額を残高の4%にする」という先ほどの条件は、あまり聞いたことがない方法だと思います。「運用しながら毎月10万円を引き出すとしてもいいのではないか」との指摘もあるかと思います。前者は引き出しを「率」で考える方法で、後者は引き出しを「額」で考える方法です。

そこで、この2つの違いを考えてみます。ポイントは、保有する資産は運用することによって価格変動のリスクを受ける一方で、引き出しは定額であるというミスマッチです。

例えば、価格下落局面が当初に訪れると、それだけで元本が減りますが、引き出し額が定額に設定されていると、さらに元本の減り方が大きくなります。

その後、収益率が高くなっても元本が大きく減った分、元本が回復する力は弱くなります。こうした収益率の並び方によって残高が想定外に減ってしまうリスクのことを、「収益率配列のリスク」と呼びます。

では、退職後に資産を取り崩して生活をする際に発生する「収益率配列のリスク」に、どう対処すればいいでしょうか。保有する資産は価格変動を受ける資産となり、その増減は年率で評価をする資産となります。しかし、引き出し額は一定の金額に固定されていますから、その差し引きで資産がどれだけ増えたのか、減ったのかがわかりません。

運用と引き出しのバランスを測る

そこで引き出す金額も、資産の価格変動に合わせて変化させる、すなわち残高に対する「率」で考えるように切り替えます。これによって、運用と引き出しのバランスが取れているかどうかがわかりやすくなります。例えば、運用で年率3%の収益率で毎月10万円を引き出すと資産は減りますか、増えますか?と聞かれても答えようがありません。

しかし、運用で年率3%の収益率、引き出しは残高の4%なら、大まかに資産は平均で毎年1%ずつ減少していくことが理解できます。秤の皿に、運用と引き出しを乗せたときにどちらが重いかわかりやすくするようなものです。

資産残高が収益「率」で変動する有価証券を保有しながら、その一部を生活のために引き出す場合に、80歳時点の想定残高をしっかり確保することを考えるのなら、引き出しのルールが大切になります。退職後の資産収入を増やす方法は収益率を高めることよりも、どうやって引き出していくかを考えることにあります。

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野尻 哲史 フィンウェル研究所代表

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のじり・さとし / Satoshi Nojiri

合同会社フィンウェル研究所代表。1959年生まれ。一橋大学商学部卒。山一証券経済研究所(のちに同ニューヨーク事務所駐在)、メリルリンチ証券東京支店調査部(のちにメリルリンチ日本証券調査部副部長)、フィデリティ投信(のちにフィデリティ退職・投資教育研究所所長)を経て、2019年5月、定年を機に合同会社フィンウェル研究所を設立。資産形成を終えた世代向けに資産の取り崩し、地方都市移住、勤労の継続などに特化した啓発活動をスタート。18年9月より金融審議会の各種ワーキング・グループ、タスクフォース委員に就任。行動経済学会、ウェルビーイング学会会員。

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