武田薬品がスイス大手を買収、業績ジリ貧に歯止め

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評価分かれるスイス企業 買収しても組織は温存

武田によれば、これで欧州では30カ国に営業拠点が拡大し、シェアランキングでは29位から18位に上昇。新興国でも売上高が一気に8倍へと増加する(下図)。ロシアやブラジルなど、ナイコメッドが強い営業基盤を持つ国で、武田製品販売の道が開ける。カバーする国は28カ国から70カ国に急拡大し、医療用医薬品の売上高ランキングでは、世界16位から12位に上昇するとはじく。

ただし、ナイコメッドの企業価値については、評価が分かれそうだ。 ナイコメッドの場合、抗潰瘍薬「プロトニックス」(一般名「パントプラゾール」)の欧州における特許切れを機に、ここ2年間は減収が続いた。10年12月期には4400万ユーロの営業赤字へ転落。その一方で次期主力製品に位置づける、慢性閉塞性肺疾患の治療薬「ダクサス」(一般名「ロフルミラスト」)が、欧米で販売許可を取得。多くの新興国でも11年に承認取得を見込む。中国ではバイオ医薬品企業の株の過半を取得、ナイコメッドの主要製品を売り込むための橋頭堡を築いていた。

「両社の間にはビジネスの重複が少なく、スムーズな統合が可能。チャレンジ精神あふれる企業文化を武田にも融合させたい」。記者会見の席上、長谷川閑史社長は豪語した。

もっとも両社は一つの会社になるわけではない。ナイコメッドは武田の完全子会社となるが、現在の経営陣や組織は温存されるという。買収交渉に携わった武田のフランク・モリッヒ米欧販売統括職は、「ナイコメッドのメンバーの引き留めに努力したい。モメンタム(勢い)をそがないことが大事だ」と強調した。

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