小野寺五典氏「日本攻撃の可能性は否定できない」 台湾有事で日本に問われる2つの危機対応能力

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

塩田:前回のインタビューで、岸田内閣発足後、安全保障に関わる3文書の改定に深く関与されたとお話しになっていました。改定に至る策定作業や協議の段階で、将来の台湾有事の懸念に対する準備をどの程度、意識しましたか。

小野寺:検討の中のかなりの部分は、日本を守るために、日本の周辺で何が一番起こりうるか、その点を選択して考えました。当然、その中に台湾有事も入っています。

日本攻撃は十分に起こりうる

塩田:台湾有事が現実となった場合、日本国内の米軍基地からの出撃も起こりうると思います。その場合、中国が日米安全保障条約を前提に、日本を攻撃する可能性は。

小野寺:否定できないと思います。日米安保条約については、岸信介内閣時代、安保改定による新条約が調印された1960年1月、同時に当時の岸首相とアメリカのクリスチャン・ハーター国務長官が取り交わした交換公文があります。これによると、第6条について、日本が攻撃を受けていないのに、日本の米軍基地を使って他の国の支援に行くことに関しては、日本政府の同意が必要という内容になっていると記憶しています。

〈塩田註=「内閣総理大臣から合衆国国務長官にあてた書簡」と「合衆国国務長官から内閣総理大臣にあてた書簡」によれば、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更ならびに日本国から行われる戦闘作戦行動(前記の条約第5条の規定に基づいて行われるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設および区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする」という一文がある〉

小野寺:台湾有事が発生して、在日米軍基地から米軍が台湾支援に向かう場合、改定安保条約の調印時の段階で交わされた交換公文に基づいて、アメリカは日本政府と事前に協議して同意を得なければなりません。これとは別に、日本が攻撃を受けた場合は安保条約第5条が適用され、米軍は在日米軍基地を使って直ちに日本を守るための行動を取る。これは無条件なんです。

であれば、台湾有事の際、在日米軍基地から米軍が台湾支援に向かうのを日本の総理が認めるかどうか。認めるということは、中国から見れば、日本がアメリカと一緒になって中国に対して何らかの行動を取ると映るわけです。向こうからすれば、日米は同じ位置にある。米軍が中国と対峙することは、日本も同じと相手に取られてしまいます。日本の政治は非常に重い判断を行わなければいけないと思います。

次ページ基地使用拒否は日米同盟崩壊の危機
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事