小野寺五典氏「日本攻撃の可能性は否定できない」 台湾有事で日本に問われる2つの危機対応能力
塩田:中国は、南シナ海で人工島を造って基地を建設したり、沖縄県の尖閣諸島周辺に進出したりする動きが活発です。それらと台湾有事はどう関係していると思いますか。
小野寺:中国が台湾で何か起こそうとしたとき、いろいろな国の関心を拡散させたほうがいいじゃないですか。尖閣など日本の周辺で何か起きたら、日本は自衛隊のアセットも海上保安能力もそこを中心に動きますよね。南シナ海もそうです。韓国も中国との間で漁業をめぐっての権益争いがあります。
いろいろなところで多発的に起こせば、それぞれの国は自国の問題に主な関心を払わなければならない。あちこちで散発的にいろいろなことが起きていく中で本命に行く。それも中国のやり方として考えられると私は思います。
塩田:反対に、多発的にやるよりも、台湾侵攻の一点集中のほうが効果が大きいのでは。
小野寺:でも、中国は別に尖閣に攻撃を仕掛けて取りに行かなくていいわけですよ。中国の海警の船が日本の領海の中に入ってグルグルやる。その監視のために、多くの自衛隊のアセットがそちらに集中する。あるいは中国が南シナ海でいろいろな行動を取るとき、アメリカのコーストガードの船を含め、支援する船がみんなそちらの監視に行く。それはおとりですから、後で本体が行くということもありうると思います。
中国がロシアの失敗から学んだこと
塩田:ロシアのウクライナ侵攻を見て、中国に何か変化があったと思いますか。
小野寺:ロシアが下手を打っていると中国に映ったとすれば、中国はロシアの轍を踏んではいけないと考えているかもしれません。
塩田:ロシアのウクライナ侵攻が長引いているのを見て、台湾への武力行使はしないほうがいいと、中国が自己抑制的になることは考えられますか。
小野寺:やろうと思う目的、意欲は変わらないと思います。ロシアのような下手を打たないようにやるにはどうしたらいいか、それを研究しているのでは。
塩田:中国から見て、ロシアが下手を打ったと映るのはどんな点でしょうか。
小野寺:やっぱり孤立してしまったことでしょう。NATOが一枚岩ではなく、中でウクライナ支援がバラバラだったり、アメリカ国内もウクライナ支援一辺倒でなく、ロシアとウクライナの対立は当事国同士の話だという空気が強かったりすれば、ロシアはこれほど世界で孤立しなかったでしょう。
中国はそれを見ているので、台湾に対して何かするとすれば、NATOも国際世論も国連安全保障理事会も一枚岩にならないように、仕掛けをしながらやると思います。
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