小野寺五典氏「日本攻撃の可能性は否定できない」 台湾有事で日本に問われる2つの危機対応能力

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塩田:台湾有事を想定して、日本は事前にどんな具体的対策を準備しておくべきですか。

小野寺:実は台湾有事が起きても、日本が攻撃を受けていない場合は、日本が台湾を支援することはないんですよ。日本が対応するのは、あくまでも日本がやられたときです。

日本が攻撃を受ける可能性は、ないわけじゃありませんので、1つは日本が攻撃を受けたとき、自衛のための反撃をする。この能力は当然、準備すべきだと思います。台湾の周囲には、与那国島や石垣島など、日本の領土があり、日本の国民が住んでいます。国民の安全を守るためにどうしたらいいか。火の粉が飛んでくるかもしれませんので、住民避難や、万が一のための自衛隊の配備など、守りを堅くしてしっかり備える。

もう1つは、実際に台湾で紛争が起きた場合、地政学的に言って、台湾に住んでいる人たち、台湾にいる日本国民や外国人が日本に避難してくることが考えられます。その受け入れもある程度、想定しておかないといけない。

岸田政権の危機対応力

塩田:現状の日本は、それらの事態を想定した体制と態勢が取れていますか。

小野寺:私は今、内閣にいませんので、はっきりしたことは言えません。仮にそれを政府内で検討していたとしても、対外的に言うことは、周辺国を刺激しますので、言うべきではないと思いますが、当然、それなりの備えはしているのではないかと信じています。

塩田:台湾有事の懸念について、岸田政権、あるいは岸田文雄首相が、基本的にどういう考えで、どんな対策を取ろうとしているのか。その点をどう見ていますか。

小野寺:2022年12月に新たに策定し、決定した国家安全保障戦略と、それに基づく防衛力整備計画は、1つの方向を示しています。日本国民を守るという方向の中で、1つの仮想のケースとして、台湾有事を想定していると思います。外に向かって明確に言わなくても十分に意識して整備されています。

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