軽い気持ちで「副業」始めた20代女性を襲った悲劇 キラキライメージあるが「兼業とは、限界の塊」

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当然ながらこのことは、会社の人にもラジオのスタッフにも言っていない。

ただ、TBS局の喫煙所で開いたPCにじっとり自分の手汗がついていた、あの光景を思い出すたび、私は「限界だったな……」と思うのである。

政府は「副業」を推進してるけど…本当にできるのか?

2018年1月、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の「モデル就業規則」上で副業禁止の規定を削除した。そして副業・兼業に関する規定を新設したのをきっかけに、副業を解禁する企業が増えたのだ。

モデル就業規則の一部
厚生労働省が公開している、モデル就業規則。副業・兼業についても詳細に綴られている(厚生労働省公式サイト)

しかし、実際には兼業とは、限界の塊である。

いや、もう少し私が器用だったら、限界にならずに済んだのかもしれない。「限界だ!」と焦ることもなかったのかもしれない。だが一方で、2つの仕事を掛け持ちするということ自体、限界を抱えざるを得ない、のではないだろうか。

泣きながら副業してる
本連載は隔週更新(予定)です。連載一覧はこちら

それは何も仕事同士の兼業生活に限ったことではない。育児と仕事、介護と仕事など、他の営みと仕事を両立させること自体、「限界だ!」と焦る瞬間の連続であるはずだ。

そこで、この連載では、意外と語られることのない「兼業」について焦点を当ててみたい。

政府は副業を推進し、コロナ禍を経て、以前より格段に兼業人口は増えた。まだ副業をしたことはなくとも、副業に興味がある、という方も多いはずだ。

が、兼業の実情は世間であまり語られていない。兼業時代、私は兼業についてのエッセイやインタビューをいつも探していたけれど、少なかった。あったとしてもやたらキラキラした働き方として取り上げられていたりして、「もっと実感に伴った言葉で語られないものだろうか」と不満だった。

だからこそ私は、本当の兼業生活の実情を、私自身がこうして語りながら、いろんな人に聞いてみたいのだ。いま推奨されるという「兼業」は、どのような限界とともに、成り立っているのだろう、と。

【編集部より】
本連載は隔週更新(予定)です。連載第2回は、11月24日(金)に公開を予定しています。
三宅 香帆 文芸評論家

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みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)『それを読むたび思い出す』(青土社)など著書多数)。

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