軽い気持ちで「副業」始めた20代女性を襲った悲劇 キラキライメージあるが「兼業とは、限界の塊」

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一応私の経歴を書いておくと、大学院生のときに1冊目の本を刊行した。その後も本を書く仕事や書評連載の仕事をもらえるようになったので、大学院卒業後も文筆業を続けることを決めていた。そのため入社する会社は副業OKのIT企業を選んだ。

結果的に、新卒1年目で本を3冊出版し、2年目は1冊、3年目は2冊の自著を刊行するに至った。新人兼業文筆家としては、比較的ハイペースなほうな気がしている。

一方、会社は大企業IT会社で、有給はとても取りやすいものの、残業はよくある会社だった。部内の人々は私が本を出していることは知っていたが、それについて嫌な顔をされたことはなかった。人間関係も良くて、同期ともたまに飲み会をしていたし、とても働きやすい会社だった……としみじみ感謝している。

が、そこまで働きやすい会社であっても、やっぱり兼業は大変だった。というか、「限界」を迎えることが多かった。

会議の日にラジオ出演の依頼が…

私が「限界だったな……」と思い出す風景は、TBSラジオに出演したときのことだ。

その日私のもとに、「新刊面白かったです。新刊の宣伝でTBSのラジオに出演しませんか?」という依頼のメールが届いた。天下のTBSラジオだ。宣伝効果はどれほどだろうか。絶対に出たい。私は一も二もなく、承諾のメールを返そうとした。

が、日付を見れば、平日昼間である。会社がある。

有給を取ろうか。そう思ったが、その日のカレンダーを見ると、自分が絶対に出たほうがいい会議が入っていることに気づいた。

「うわ、これGMも来る会議で、私が資料の説明するタイミングや……ゆ、有給なんて空気の読まないことできない……」

青ざめた私の脳内に、一瞬だけ「体調不良で休む!?」という悪い考えがよぎった。が、冷静に考えて、私は実名でTBSラジオに出演するのである。万が一会社の人が聞いていたら、一貫の終わりである。さすがにそんな悪いことはできない。しかしTBSラジオで自分の書籍の宣伝をさせてもらえるなんて、そんな機会他にないだろう。

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