イスラエル、なぜ「3つの宗教の聖地」となったのか 戦禍が絶えない理由を地理から紐解いてみる

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7世紀には、ここはイスラムの地となる。イスラムの預言者ムハンマドが夜の天国の旅に出た地とされ、メッカ、メディナに次ぐ第3の巡礼地とされた。

エルサレムは、11世紀にはキリスト教の十字軍の支配下となり、13世紀にはイスラム国家となる。16世紀にこの地を支配したオスマントルコは、エルサレムを3宗教に開いた。このようにエルサレムは歴史的および宗教的背景が絡み合った、難しい立場の都市である。

誰もが平和を望んでいる。好んで戦いをしたいと思っているわけではない。しかし、不幸にも世界各地で軍事衝突が起こっている。イスラエルを含むパレスチナもそうした地域の1つである。

現在、イスラエルでは、「ユダヤ人」は、「ユダヤ人の母親から生まれた人」または、「ユダヤ教に改宗を認められた人」と定義されているが、ユダヤ人の民族的共同体としての意識は、ユダヤ教を精神の糧としてすこぶる強い。

建国の経緯やアラブ諸国との対立から、イスラエルの国家財政における軍備の割合はきわめて大きい。ダイヤモンドの原石を輸入し、加工したダイヤを輸出するなどで外貨を得ているが、外国に住むユダヤ人からの収入や、ユダヤ人が多く住み、財政などの実権を握っているアメリカの援助が大きい。

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現在、イスラエルの人口の4分の3はユダヤ人が占めるが、約2割はアラブ人である。イスラエルの公用語はヘブライ語だが、アラビア語も特別な地位を有する言語としている。

1979年にエジプト、1994年にヨルダンと平和条約を締結した。パレスチナ解放機構(PLO)とも1993年にパレスチナ暫定自治に関する原則宣言(オスロ合意)に署名したが、軍事衝突はその後も起こっている。

2020年には、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーン、スーダン、モロッコと国交正常化に合意しアラブ諸国との関係改善を図り、パレスチナの平和を模索していたが、今回の衝突で先行きは不透明になった。

体が沈まない死海がある国

戦禍が絶えないイスラエルだが、美しい自然や都市も多い。

イスラエルの国土は乾燥した不毛地帯が多いが、北部は地中海性気候で農業などが行われている。科学調査に基づいて開墾や灌漑がなされ、さらに先端技術を導入することにより、耕地面積を増加させ、多くの農作物を収穫できるようになった。国土の約2割が農地である。

大地溝帯の一部である死海は、美しい湖である。水面が海面下400mなので、周囲から流入する河川はあっても、この湖から流出する河川はない。つまり、水の蒸発量が多いということなる。それは塩分が多くなる要因となり、水に浸かると自然に体が浮く理由はここにある。

井田 仁康 筑波大学人間系長、教授/博士(理学)

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いだ よしやす / Yoshiyasu Ida

1958年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。

編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『高校社会「地理総合」の授業を創る』(明治図書)などがある。

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