多様性を競争力に--外国人CSRコンサルタントが考えるダイバーシティの生かし方

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 これは文化の話ですが、実は企業価値にも影響を与えています。たとえば、ローコンテキストの国々は米国、英国、ドイツ、オーストラリア、北欧諸国、英国系カナダなどです。

一方でハイコンテキストの国々には日本やブラジル、ロシア、インド、中国、イタリア、スペイン、アラブ諸国、フランス系カナダなどがあります。
 
 両者の間では、企業経営でのマネジメント手法、あるいはマーケティング手法において大きな違いが出てきます。

ハイコンテキストの国は暗黙の理解・了解があり、言わなくても理解してもらえるという期待があります。これからの成長市場のほとんどはこうした文脈がものを言うハイコンテキストの国々になってくるわけで、企業経営の中で文化を知る重要性は増してきています。

そして、こうした文化的な違いはダイバーシティの成り立ちにも影響を与えています。米国は多様な民族で成り立っている国ですが、大手企業は白人男性が圧倒的な存在感を示していた社会、中でもホワイトカラーの企業文化で成り立っていました。

ところが、20世紀後半になると、ヒスパニック系やアジア系米国人が増え、米国の人口構成に大きな影響を与えました。そのことによって、市場の変化--お客さまの構成の変化が起き、「米国=欧州系白人」の歴史の終焉を迎えているわけです。
 
 また、グローバル市場に進出する、特に新興国や新・新興国への進出という課題もあり、20世紀後半からダイバーシティ経営が重視されるようになりました。

米国では、ダイバーシティの初期はマイノリティの包容に焦点が当てられ、Women Minorities Disabled Veterans --女性、マイノリティ、障害者とベトナム戦争で障害などを負った人たちが中心でした。
 
 しかし、最近では、Lesbian & Gay Bisexual とTranssexual、GLBTと言われる場合もありますが(レディファーストだとLGBTにフォーカスが当たっていますが)、さらにサプライヤーやコミュニティ、顧客の多様性にどう応えるかということが中心的なテーマになってきていると思います。

また、米国のようなローコンテキストの国では、若い世代と年上の世代との価値観のギャップが広がりやすいため、ジェネレーション・ダイバーシティも重要なテーマの1つとなっています。日本でもジェネレーション・ギャップのことが言われていますが、米国ほど深刻な問題とはなっていません。

一方、日本はどうでしょうか。日本は私の国デンマークと比較しても均一性が強く、企業においては「男性=企業戦士」という文化が長年続いていました。しかし、そうした文化も、共働きの増加や女性の社会進出、少子高齢化による人口減によって日本男児だけで企業を牽引する形に限界が見えてきたのだと思います。
 
 また、米国と同じようにグローバル市場への進出をどのように図っていくかという課題もクローズアップされてきました。

そういう背景の下、02年、当時の日経連が「原点回帰 ダイバーシティ・マネジメントの方向性」という報告書を出したことをきっかけとして、女性の活躍推進がダイバーシティの焦点になりました。ここ5~6年はワーク・ライフ・バランスが加わっていますが、この背景には「次世代育成支援対策推進法」が2003年に制定されたことがあると思います。

ただ、世界経済フォーラムの2010年のジェンダー・ギャップ指標を見ますと、日本は94位です。今も女性の活躍が重要なテーマとなっているのは当然のことです。

では、日本のダイバーシティはこれからアメリカと同じ道を歩んでいくのかというと、必ずしもそうではないと思います。日本社会の人口カーブを見ますと、現在1億2700万人の人口が40~50年後には8000万人から1億人になると予想されています。

人口減に直面する中で、日本は女性の活躍のさらなる推進と高齢者など多様な労働力の活用が求められています。実際、日本には元気な高齢者が非常に多く、今後、世界の中で高齢者活用のモデルを示す可能性があると思います。また、外国人の積極的な採用と移住の奨励も必要でしょう。日本社会をあるレベルで維持しようと思えば、もっと積極的にアジアから日本に人を取り入れていかなければ厳しくなるのではないでしょうか。

こうした大きな変化に日本は今直面していますが、これだけではありません。世界の成長市場の重点が移る中で、多様な文化的背景を持った労働力の確保と活用が重要になってきます。BRICSや、さらに次なる成長のフィールドであるメキシコ、ナイジェリア、エジプト、トルコ、インドネシア等々に進出するときには、また新たなダイバーシティ・マネジメントの形が求められてきます。

すなわち多様な文化的背景を持った労働力の確保と活用をどのように進めていけばいいのかという問題と同時に、現地市場の理解に基づいた新しいかたちのイノベーションが必要だということです。そうした意味では、ダイバーシティ・マネジメントは国内での側面と海外での側面とがあり、膨大なマネジメント領域になっていると言っていいのではないかと思います。

企業競争力とダイバーシティ・マネジメントを考える

続いて、企業の競争力とダイバーシティとの関係について考えてみたいと思います。私がここで言う「競争力」は、自社がこれからの市場環境の変化において力強く勝ち進むことができるかどうかという意味です。

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