日本でも海洋資源開発のエンジニアリング企業の強化・育成を
今般のペトロブラスの発注は、28隻のドリル船建造計画の一部であるが、4つのパッケージに分け、特定の造船所に一定期間まとまった仕事が続くように工夫されている。ペトロブラスだけでも、他にFPSOなど生産設備が40隻超、支援船など250隻等を2020年までに建造予定であり、結局このビジネス機会をどのようにとらえるかということである。ちなみに、2月の掘削船の入札でも、ヤードも存在しないペーパー造船所が受注見合いでいくつも入札参加している。
他方、大西洋をまたいでアフリカ西岸沖には、すでにブラジルと同じ地質構造の油田層の存在が確認されており、同種船舶の建造需要もあるところ、ペトロブラスがオペレーターの案件では、ブラジル造船が優先されることになる。
懸念材料があるとすれば、コスト高である。前述のとおり、人材の逼迫でもともと高いブラジルの人件費が上昇しているほか、レアルの対ドル為替レート高によるドルベースでのコスト上昇やインフレ対策としての高金利政策による金融費用の増大など、産業空洞化を惹起しかねないと懸念する見方もある。
特に日本の排他的経済水域の資源開発に必要な設備を外国に依存しないためにも、実際のプロジェクトに関与していく意義は大きく、設計やエンジニアリング、舶用資機材といった分野がフィージブルではないかと考えられる。高速のメガ輸送船や巨大な海上基地、修繕拠点などまったく新たなコンセプトの開拓にも関与できるのである。
新石油法で内外企業の海上油田開発が活発化
現在、日本でもEEZの資源開発にかかる技術研究、生産された鉱物資源の経済的利益の帰属などに関して、民間企業が新たにチャレンジできるような環境はまだ整っていない。
鉱物資源開発に関する現行鉱業法は、マッカーサー占領下の1950年12月に施行されたもので、陸上か海底かの所在を問わず、日本法人であれば、内外資本無差別に、先願主義にのっとり、広く採掘を認め、また「物権」として採掘期間であれば、その果実収受権に制約はなく、鉱物資源を掘り尽くすことができることになっている。
現在、政府において、現行鉱業法の探鉱先願主義を改める法改正作業が進んでいることは評価される。しかし、サウジアラビア、ロシア、ノルウェーなど自国の資源会社を育成してきた多くの資源国では、物権としての鉱業権益を採らずに生産分与方式による債権的構成を採っていること等を踏まえ、EEZの資源を開発する戦略的資源開発会社の育成のための環境整備がさらに必要であり、一般法としての鉱業法改正に加えて、例外的な特別法による措置が求められる。